華山みおの物語探索 その45

『シジュウカラ』結婚しても、子供がいても、女性には女性らしく生きる権利がある…アラフォー女と20代の男の異色のラブストーリー!

 恋愛漫画の主人公は大体中高生、それ以外は20代前半とかがほとんど。そんな常識、誰が決めたの? 今回は主人公の年齢が39歳。新しいタイプの恋愛漫画そしてお仕事漫画、坂井恵理先生の『シジュウカラ』(双葉社)をレビューします。

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【漫画家でした、今までは。女でしょうか、私は今でも。】
 キャリア20年の売れない漫画家・綿貫忍(39)は、義父の死をきっかけに、家族で夫の実家に引っ越してきた。これを機に、筆を折る決意を固めていた忍だったが、過去の作品が電子書籍でヒットしたことを受け、新作を描くことに。そこでアシスタントを募集したところ、応募してきたのは橘千秋という、22歳の美しい青年で…。実力派の作者が描く、40歳からの恋と仕事と愛と夢――!

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 恋愛ドロドロ系の漫画って物語として読むのは面白くても、自分が体験するのはちょっと……じゃなくてかなり嫌。体験するなら少女漫画みたいなキュンとしてドキっとする恋がしたいです。

 倫理的な問題として、結婚して家庭に入った女は夫以外にときめいたり恋に落ちたりするのはご法度ですよね。結婚とはその相手を生涯の伴侶とするという契約を結ぶこと。まぁそれは旦那の側にも言えるわけですが、なぜか女性の方が結婚後は恋愛市場での居場所はなくなるイメージが強くありませんか。男性側は結婚した後の方がモテているイメージもあるんだけど、これはなぜなんでしょう。

 恋愛だけでなく、仕事の面でも結婚すると女性は男性よりも第一線に立ちづらくなりますよね。最近は女性の活躍は多方面で著しく、減ってはいるでしょうが産休などに入ればやっぱり色々と割を喰う立場になってしまいます。

 この漫画の主人公・綿貫忍も、結婚して子どもを産み、トキメキのない毎日を送り、夫の実家への引っ越しを機に漫画家のアシスタントの仕事も辞める……という状況にあいました。仕方がないことなのかもしれませんが、全部彼女が諦めなくちゃいけないことなんでしょうか。アシスタント先の先生も引き留めてくれているし、漫画を描きたいという意欲もあるんです。それなのに…‥。

 40歳の誕生日を目前に控えたある日、忍に転機が訪れます。過去作品が電子書籍で大ヒットし、その結果が目に見えて“お金”という形で現れたのです。“売れる”と思われれば編集部からも「新作を描かないか」という誘いが来ます。辞めたくないけど辞めようと思っていたタイミンでの仕事のチャンスは、否が応でも燃えない訳がありません。パソコンを購入し、アシスタントの募集を開始するなど意欲的に行動を始めます。

 アシスタントとして雇ったのは、後に忍の人生に大きな影響を与える橘千秋。なんと彼は、忍を苦しめた夫の浮気相手の息子だったのです。夫の浮気を今まで見て見ぬ振りをし、咎めもしなかった忍。当時まだ小さかった千秋にとって、忍も浮気の共犯のように感じるものでした。

 千秋の想いを受け止め、むしろそれを仕事に組み込もうとした忍の姿は実にカッコイイです。これからの人生、恋をしなくても生きて行けるけど、仕事はしないと生きて行けなくなる可能性があります。20年間ずっと捨てられなかった“漫画を描く”という仕事。そのチャンスが目の前にあるんだもん。全てをそこに活かすために動きますよね。

「橘くんもデビューしてしばらくしたら分かるよ。描く場所があるのがどんなに嬉しいか。若い頃の理想と違っても全然みじめなんかじゃないんだよ。」

 忍のこの台詞が染みました。私も思い描いた声優生活ではないかもしれないけど、マイク前に立つことがどんなに嬉しいか。もちろんその後に続く「とはいえやっぱりお金は欲しい! 今からでも売れたい!」にも完全同意ですけど。

 夢がなくなったわけでは当然なくて、今の自分ができる道に軌道修正して、折り合いをつけて、でも虎視眈々とチャンスを狙っているのです。

 その仕事への向き合い方。昔だったら千秋みたいに「なんで?」って思ったかもしれません。でもいまなら分かります……。

 仕事への向き合い方も定まり、千秋の思惑についても互いに理解をしあい、改めて漫画家とアシスタントとしての関係を築き始めると、その仲の良さに変に嫉妬心を見せてくる夫。この身勝手さ……。改めて、あの時から自分が夫を許せていなかったことに気づき、今後の人生について改めて考え直します。

 忍の人生を大きく変えることになる千秋には、まだ明かされていない秘密がありそうですが、その秘密はやはり、浮気からの家庭不和によって生み出されたものなのでしょうか……。
仕事と家庭、そして女としての幸せは歳を重ねた上で得るためにはどんな試練が待っているのでしょうか。今後の展開にも期待です。
(文=華山みお)

シジュウカラ

シジュウカラ

昼ドラ化してほしい

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