『子連れ狼』『クライング・フリーマン』だけじゃない。追悼・小池一夫のいまこそ読んでおきたい作品5選

 小池一夫先生が亡くなられた。令和を前に、惜しい人が次々と亡くなる。しかし、作者が死しても作品は残る。毀誉褒貶のあった小池先生だけれども、人生の大事なことはだいたい小池先生が教えてくれた。

 訃報では代表作として『子連れ狼』(作画:小島剛夕)や『クライング・フリーマン』(作画:池上遼一)などの作品名が挙げられている。

 膨大な作品群の中で代表作を挙げるとすれば、そういうことになるんだろう。でも、読んでおきたい作品はもっとある『実験人形ダミー・オスカー』(作画:叶精作)とか『高校生無頼控』(作画:芳谷圭児)もそう。というわけで、今回は追悼の意味を込めて読んでおきたい小池イズムを感じる作品を紹介することにする。

■『サハラ 女外人部隊』(作画:平野仁)

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『サハラ』Kindle版

1960年のアフリカはアンゴラを舞台にポルトガル軍に組みする女外人部隊の描く作品。ゆえあって女たちは、ここへ流れ着いたわけだが理由がだいたい「愛」。隊長のチュチュ・ヒステリーカ(フランス人)からして、フランス情報機関のスパイだった恋人が任務のために自分を利用したことに絶望し「仕事のために捨てられる愛なんて愛ではない」と恋人を殺した過去を持つ。アンゴラのゲリラは、女外人部隊とみると戦闘中なのにレイプしようとしてきたり、作品の勢いがスゴイ。各回のタイトルが「サンフラン死スコ」とかいちいちカッコイイ。

■『デュエット』(作画:井上紀良)

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『デュエット』Kindle版

井上氏とのコンビでは『マッド★ブル34』も名作なのだが、こっちも勢いがスゴイ。主人公・鉄樹は根津財閥の後継者であるヒロイン・雪妃をガードするために赤ん坊の頃から、暗殺教団・サッグに育てられた男。初期は日本を舞台に戦っていたが、途中から色々あって舞台は世界へ。ホメイニ師が送り込んだイランの特殊部隊とか敵がインフレしたりしなかったり。鉄樹は暗殺教団のボスでメンバーたちは「カリフ」と呼ぶのだが、大丈夫かコレ。まあ、勢い優先なので大丈夫か。敵を瀕死にして逃がしボスを見つけるというプロットの使い回しは、この作品でも。

■『魔物語 愛しのベティ』(作画:叶精作)

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『魔物語 愛しのベティ』Kindle版

魔女っ子ものである。しかも作画は叶氏である。そして、ヒロインはロリ巨乳である。とても『実験人形ダミー・オスカー』と同じコンビでやっているとは思えない、小池先生の作風の広さを感じさせる作品。親分の仇討ちに向かう途中に全裸の魔女ベティと出会った三下ヤクザの胆平が、いろいろあって愛を育み、娘が出来て家族との幸せを得ていくという作品。バイオレンス一辺倒に見える小池先生だけど、その根底に流れるロマンチズムが全開になっていてヨシ。

■『木曜日のリカ』(作画:松森正)

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『木曜日のリカ 』 (劇画キングシリーズ)

「ノーベル殺人賞」という謎の賞を生み出したことで歴史に名を刻んでいる作品だが、意外に読んだことのある人が少ないはず。後年『湯けむりスナイパー』で人気を得た松森氏だが、この頃の絵柄はより都会的。扉絵がカラーでないのが残念。タイトルの由来はヒロインである世界でただ一人のノーベル殺人賞をもらった女・リカが本業はタレントで木曜日にレギュラー番組を持っているから。でも、その設定はすぐに消滅。

都合が悪くなった設定を無視する行為は、「動かしにくくなったレギュラーキャラは壮絶に散る」「主人公が旅に出る」と並ぶ小池イズムの根幹。敵が東京の街を混乱させるためにF1カーで歩行者天国を暴走し人を撥ね殺したりする展開とか勢いに飲まれるしかない。「いくら殺しのメダリストといえどもこいつにはかなうめえ!! スペインサラスケーター製オート・バグラーよ!!」とか、得物を解説する親切な敵がヨシ。

■『修羅雪姫』(作画:上村一夫)

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小池一夫選集『修羅雪姫』(秋田書店)/上村一夫公式サイトより

 梶芽衣子の映画で知られる作品だが、原作はコンパクトにちゃんと完結している。小池作品の特徴として、連載が長期に及ぶと引き延ばしている感が出てしまうことがあるんだけど、この作品は緻密にプロットが練られてスムーズに完結しているのがいい。筆者の所有しているバージョンだと単行本で5巻なのだが、それでいて話がものすごく濃い。なにかと長期連載で単行本が数十巻になったりする「名作」が多い中で、短く話をまとめるのも才能だと感じる作品。なお「復活之章」とか「外伝」はなかったことにしたい。

(文=昼間 たかし)

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