【劇場アニメレビュー】設定の変更で先が読めない展開が功を奏す?『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ最新作レビュー

 さらに、オリジナル『さらば』『2』では平和ボケした地球を主人公・古代進らが憂えるという基本設定があったが、『2202』では逆に地球はひそかに武力増強を図り続ける脅威的星家と化している。

 こういった設定のもと、『第一章 嚆矢篇』では冒頭いきなりガトランティス帝国が地球攻撃を開始し、地球とガミラス同盟軍がこれを迎え撃つという展開に見る側は面食らうが、やがて古代たちはオリジナル版通りに、テレザート星のテレサから放たれたメッセージに応えるべく、『第二章 発進篇』で再びヤマトを宇宙の大海へ出航させていく。

 そして今回の『第三章 純愛篇』では、テレザート星へ向かう途中、ガトランティス帝国の猛攻から第十一番惑星の危機を救おうとするヤマトの活躍と、その後で何と古代と帝国ズオーダー大帝が邂逅し、互いの説く「愛」の相違に基づく究極の選択を迫られるという、『さらば』とも『2』とも異なる、現代社会を生きるスタッフからのメッセージが濃厚に描出された一篇となっている。

 それまでの旧シリーズは、いわば「愛のために戦う」美しさを唱えてきていたが、ここではその「愛のために戦いが起きてしまう」愚かさを敵の大帝が説く。これはかつてタモリが「愛さえなければ世界は平和」と皮肉めいて発した名言を彷彿させるものもある。

『2202』では作家の福井晴敏がシリーズ構成・脚本として参加しているが、もともと『機動戦士ガンダムUC』を執筆するなど大のガンダム・ファンであった彼独自の目線が今回は大きく反映されている。

 もっとも、今回のこれらの設定の数々はドラマツルギーとしてはかなり強引で、たかだか一隻の宇宙戦艦の艦長代理に、巨大なる敵の大帝がわざわざ会おうとすること自体に無理を感じないではない(一応こういった行動に出た理由も、それなりに匂わせてはいるが)。
しかし今回はそのリスクを冒してでも本シリーズの「愛」の定義を見る側に伝えたかったのだろう。

 思えば前作『2199』も、当初はオリジナルを見て育ったクリエーターたちが現代的解釈を施しながらリメイクしたものとして興味深く見ていたが、そのうち奇抜で強引な新設定が増えていくにつれ、一体どうしちゃったのか? と首をひねりたくなることすらあったのもたしか。しかしながら、よくよく考えてみると、かつての旧シリーズ自体が毎回強引な展開の繰り返しで呆れつつも、なぜか“ヤマト”というブランドのオーラによってすべてが許されてしまうという不思議な現象が、リメイクたる『2199』『2202』にも起きてしまっているようである。

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