『月がきれい』前半まとめ 被害者続出深夜の恋テロ殺傷力再確認「ああああああ」

■なぜ『月がきれい』の恋テロは殺傷力が高いのか?

『月がきれい』が描いているのは、嫁でも妹でもハーレムでもなく、主人公2人の恋そのものだ。小太郎と茜は“人物”として捉えられているので、ちょっとキャラが薄い。輪郭が強くない分、視聴者は自分自身を投影しやすくなっていると思う。

『月がきれい』を表現するとき、本レビューでは“深夜の恋テロアニメ”というフレーズを使っている。元ネタは『孤独のグルメ』などで使われている“飯テロ”。おいしそうな食事をおいしそうに食べている登場人物の姿を見て、我々視聴者は猛烈に腹を減らす。

 では、なぜ『月がきれい』の恋テロは殺傷力が高いのだろうか? そもそも、なぜ中学生の恋愛を描くだけでテロが発生するのだろうか?

 答えは簡単。誰しも恋の経験があるからだ。誰しも飯を食ったことがあるのと同じことである。

 その恋が成就したかどうかは関係ない。ずっと恋愛から遠ざかっていたり、恋人ができたことがなかったり、恋愛を遠ざける生き方をしていたりしても、一生のうちのどこかで誰かに対して「あ、いいな」と思ったことぐらいはあると思う。その心の揺れ自体が恋だ。

 たとえ10年、20年前のことでも、心の奥底に封印していたとしても、『月がきれい』がその部分を絶妙にくすぐってくることで、一気に記憶が蘇ったり、羨望や嫉妬がないまぜになった、得も言われぬ感情がわきあがってきたりする。その結果が「ああああああ」という声になるのだろう。あのとき、小太郎や茜のように行動していれば、その恋はかなったかもしれないのだよ……。

■新オープニング解読

 話の順序が前後するが、今週から新オープニングになっていた。旧オープニングは川越の風景画とダイジェストで構成されていたが、新オープニングでは小太郎と茜がそれぞれ好きなこと(小説と陸上)に打ち込む姿と交友関係が描かれている。旧オープニングでは実写映像を処理したようだった「川越まつり」の作画が圧巻。2人がつき合っている様子は描かれておらず、これから恋が始まるような感じの内容だ。制作陣はこのオープニングを最初から使いたかったんじゃないだろうか?

 新オープニングの最後には、小太郎が書いたと思しき小説のタイトルが写る。筆名が「安曇治」になっているのが微笑ましい。安曇小太郎と太宰治のマッシュアップ! イモのマスコットが2つ並んでいるということは、きっとこれは恋が成就した後に書いたものだろう。エンディングに登場する2人がつき合った後のLINEのやりとりと対応している。

 小説のタイトルが「13.70」となっているが、これは茜の100メートル走のタイムだと思う。3話で千夏(演:村川梨衣)が見ている記録表には、茜の記録は13.98と記されていた(千夏の記録は14.25)。ちなみに1話では小太郎が書いた最初の小説が写っていたが、タイトルは「弱酸性の風が吹く」というものだった。……角山出版の編集者にボロカスに言われるのがわかるような気がする。自意識が肥大した少年による考え過ぎなタイトルだ。

 一方、「13.70」は茜と陸上をテーマにした小説だろう。つまり、小太郎は恋愛を通じて自分の外の世界を獲得したということになる。タイム自体が茜の成長を示し、小説のタイトルが小太郎の成長を示しているのだ。

 さて、来週からはいよいよ終盤戦に突入。はたして、小太郎と茜、そして千夏の恋路はどうなる? 気になる!
(文/大山くまお

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