つるかめ『雨天の盆栽』迂闊に手が出せない!! オンリーワンすぎる女子たち 

 樹が泣いてる……ッ!!

「○○女子」というカテゴライズで、マニアックな趣味の女の子が登場する作品は有象無象。

 以前は「ほう、ちょっと試してみようか」と、読者も心を動かすものが中心だったと思う。でも、それでは凡庸の海に埋もれてしまうのか、最近ではあらぬ方向に尖った作品が次々と。

 今回紹介する、つるかめ『雨天の盆栽』(マッグガーデン)は、尖りまくった作品である。もともと、尖った作品ばかりで責めてくる感のあるマッグガーデンだけれども、まさか盆栽で推してくるなんて!!

 物語は、この系統の作品にありがちなマニアックな女の子との出会いから。盆栽ガールの雨宮雨天は、容姿端麗才色兼備なカンペキ女子である。でも、いろいろあって孤高。そんな雨天と、日常に何か打ち込めるものを求めている小日向楓が知り合ったことで、物語は始まる。物語はこの2人に、苔を愛して止まない水鳥かのんを加えた3人で回す構成である。

 だが、扱うものが盆栽というだけに、挿入されるエピソードはハードルが高い。

 というのも、盆栽というのは「水やり三年」といわれるまでにスキルを問われる趣味だというのだ。当然、水やりの道具にもこだわりが必要だ。もらった苗木にペットボトルで水をやっているという楓に、雨天は「樹が泣いているわよ」と、刺すような一言をぶつける。

 そう、盆栽において流水の衝撃で土や葉の崩れる恐れがあるペットボトルなど厳禁。雨のように「如雨露」で水をあげなくてはならないのである。「ジョウロ」でも「じょうろ」でもなく「如雨露」で、である。

 いきなりハードルを上げてきたなあと、読者は思うだろう。でも「如雨露」を買うのは専門店でもなんでもなくてホームセンター。まずは、背伸びをせずに無理なく続けられるものを買うのがよいと、雨天は指南する。一方で、盆栽家の憧れの品として「根岸産業の銅の如雨露」なるものもリスペクト。この文章を書くにあたって調べて見たところ、世界から注文が殺到している品だとかで、価格は2万円以上!!

 あまりにマニアな趣味を扱う作品であるが、決して読んでてイヤな気分になることはない。というのも、作者のつるかめ氏の絵がやたらと魅力的なのである。表紙の塗りからして独特の作風のつるかめ氏。さらに、pixivを見ると、お尻を描くのが格段に上手いという発見も。一見、サブカル寄りのタッチなのだけれども、実はものすごい色気のある絵柄なのである。

 マニアックなネタなのに、吸い込まれるのは隠れた理由があったのである。
(文=是枝了以)

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