日本国家ならではの「現実的」かつ「妥当」な判決──CG児童ポルノ裁判・控訴審判決を読み解く

 地裁・高裁と多くの言葉が費やされているが、判決の大前提にあるのは国家の体裁を守ることにある。たとえ、一部のマニアや変態しか興奮しないものであっても、お上にとってけしからんものについては、相応の罰を与える。法律上は、まったく別の概念であるはずの「ワイセツ」と通底する意識が、そこには働いている。

 地裁判決で、裁判官が最後に「今後は、気をつけてください」と高橋さんに述べた。この一言に、そうした思想が顔を覗かせているのだ。

 一応、裁判はいまだ上告審を残している。けれども「まだ、最高裁があるんだ」と映画『真昼の暗黒』のごとき言葉は吐けない。もはや、国家の体面のために結果は見えているからである。

 末尾にこれまでの記事のまとめを記すが、この事件の裁判の取材は2013年12月の東京地裁での初公判以来、長期間に及んだ。

 この間、2014年7月には改定・児童ポルノ法が施行されるなど言論/表現の自由をめぐるトピックは絶えることがなかった。

 にもかかわらず、この裁判に対する世間の関心は徐々に薄れていった。同時期に始まった、「アート」のワイセツ性をめぐって争われている「ろくでなし子」裁判で、逮捕起訴された、ろくでなし子氏が、無名の芸術家から言論/表現の自由をめぐる問題で史上もっとも注目を浴びた人になったのとは、好対照である。

 巷の創作に励む人々も、いつなんどき国家権力からの弾圧を受けるかはわからない。この二つの裁判は、いざ、逮捕された時に自分は、どっちに振るか教えてくれているものだと思う。

 こうした裁判を通して、児童ポルノからワイセツまで、国家は不明瞭な理由のままに「けしからん」と思うものに弾圧を加えてくる。

 それによって国民国家の社会秩序を維持せんとしているものであることを、改めて明らかにしている。

 けれども、裁判の判決内容云々に対する批判はあれども、国民国家が継続する限り、こうした判決が繰り返されることに気づいている人は少ないように思える。

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