舞台は高裁へ──「CG児童ポルノ裁判」ここまでのまとめ

1604_CG.jpg「裁判所」公式サイトより。

 3月の「表現の自由」をめぐるもっとも大きなトピックは、CG児童ポルノ裁判の判決が下されたことである。

 この事件は、2013年7月にデザイナーの高橋証氏が、メロンブックスを通じてダウンロード販売したデジタル画集『聖少女伝説』『聖少女伝説2』が児童ポルノにあたるとして、逮捕起訴されたものだ。

 3月15日、東京地裁は高橋氏に対して懲役1年罰金30万円、執行猶予3年(求刑は懲役2年罰金100万円)の有罪判決を下した。

 これに対して、高橋氏は即日控訴しており、高橋氏の作成したものが児童ポルノにあたるか否かは、高裁に場を移してさらに争われることになる。ここでは、筆者の考えるここまでの要点を改めて述べておこう。

 なお、詳細な裁判の経緯は当サイトの過去記事を参考にしてもらいたい。

 今回の裁判で検察が児童ポルノであるとした画像は34点。そのうち裁判所が児童ポルノであると認定し、有罪の根拠としたのは3点である。

 今回の裁判で、検察側と弁護側の主張は真っ向から対立していた。

 検察側は、現在は児童ポルノに該当する過去に販売していた写真集などを、スキャンして取り込み、トレースや加工してCGを作成したとする。

 対して、高橋氏と弁護側は、参考のために取り込んだ画像はあるが、すべてPhotoshopで一から描いたものだとした。またその作成目的は、写真ではできない技法を使い理想の人体を描くことを目的としたものであると主張された。

 これに対して判決で裁判所は「作成経緯や動機を踏まえ、重要な部位において、一般人が実在の児童を忠実に描写したと認識出来る場合は、実在の児童とCGの児童が同一と判断できる」として有罪の判断を下している。

 3行でまとめてみると次のようになる。

検察:少女ヌード写真集をトレスしたから児童ポルノだ
弁護:これは絵だ!
裁判所:なんだかわからんが、実在のモデルと似てるからアウト

 おそらく裁判官も判断に苦しんだとは思うのだが、モノが少女ヌードを描いた“けしからん”ものだけに、社会秩序を維持することが至上命題の国家権力として、有罪判決を下したのだと思われる。

 だが、この判断は「たとえ絵でも実在児童と似ていたらアウト」というわけで、さまざまな創作において影響を与えかねない判断であることは確かである。

 この点で、判決後の記者会見で「不当判決」であるとした高橋氏と弁護側の主張に異論はない。

 だが、この問題は単に「表現の自由」への抑圧だと主張しきれない側面がある。

 というのも、事件の発端となった高橋氏の描いた少女ヌード絵画が、過去の写真集に登場してきたモデルと似ていることは確かだからである。

 この点、高橋氏が似ているとされたモデルの写真集を所持していたことも明らかになっているし、販売サイトで購入者からの感想などでも、特定のモデル名が挙げられたりしていて「似てないですよ」「絵ですよ」というのは、相当苦しい側面がある。

 国家権力云々を別にして、過去、ヌードを撮影された少女モデルの立場に立てば20~30年前の写真集をネタに、自分とそっくりの裸の絵が描かれているということになる。これで、本人の前で「今じゃ、オバサンになって顔も変わってるからいいでしょ」とか「絵ですよ」「表現の自由ですよ」とは……筆者は、とてもいえない。

 判決後の記者会見で、今後も同様の創作活動を続けていくのかという質問に対して、高橋氏は「明らかに誤解を受けやすいものは、もうやらない」と答えている。

 あらゆる表現は、知らない誰かを傷つける可能性を持っている。その中で、作品をつくる者はどう考えるのか。この裁判が提示している問題は、これだ。
(文=ルポライター/昼間 たかし http://t-hiruma.jp/

図解 裁判のしくみ

図解 裁判のしくみ

東京高裁では、どうなるのか。

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