『妖飼兄さん』腹違いの兄の職業は“妖怪レンタル”!? 異母兄弟の絆を描くダークファンタジー

 父親は自分の誕生前に死んでいて、親戚もいない八瀬柊。そして先日、とうとう母親も亡くなってしまった。天涯孤独となってしまった柊だったが、死の間際に母に聞いたのは、自分には腹違いの兄がいるということ──。そんなシリアスな展開から始まる『妖飼兄さん』(作:真柴真/スクウェア・エニックス)。異母兄の烏は、役所勤めの公務員・柊の勤務地である湘南市で、ペットショップ「Crow」を営んでいるという。まずは客のフリをして様子を伺おうと入店すると、変わった品種ばかりが非常識な程の高額で売られている。しかし接客してくれた青年は、絵に描いたような理想の兄像。柊は思わず感激して名刺を差し出し、自己紹介をして「お兄ちゃん」と呼ぶが……。

 はい、やっぱり勘違いですよねー! 突如現れた、全身包帯の怪しい男が、実は店長である兄・烏だったのだ。しかし「兄弟は他人の始まり」と言う兄。彼に反感を覚えた柊が、しれっと嫌味を吐いて立と去ろうとすると、そこへ来客が。「我欲の淵から覗くモノ」という言葉が合言葉なのか、烏は「あっちの商品の客か」と別室へ案内する。法に触れる行為ならば役所としては黙ってはいられないと、柊がその様子を見ていると、烏は自らの身体を傷付けて巻物に垂らし、柊もろとも“幽廓(ゆうかく)”という異世界に飛ばされてしまう。そこでは数多くの妖怪が飼われていた。そう、烏の本業は、“妖怪レンタル”なのだという。

 不正やペテンが大嫌いな柊は、その異世界がプロジェクション・マッピングだとか、妖怪をよくできたフィギュアだとか、すべてが手品で烏が詐欺師だとまで言う。依頼人のことを「我欲主義者」と呼び、高額な金に見合う妖怪を貸し出して、その願いを叶えるのが烏の仕事だった。しかし、現実はそんなに甘くはない。依頼人は願いを叶える代わりに、彼らが妖怪の扱い方を間違えると、相応の報いを受けることになるのだった。このままでは不幸な人間が増えていくばかりだと危惧する柊は、自分が何とかしなければいけないという正義感に駆られるが──。

 柊が兄と勘違いした、烏の店でバイトをしているカワドウ青年は、何やらワケアリで烏から離れられない様子。それも烏のせいだと思い込んだ柊は、ますます異母兄に不信感を募らせていく。そうだ、あの巻物を燃やしてしまえば、妖怪も呼び出せなくなるのでは!? そう考えた柊は、入浴中の烏から巻物を盗み出す。公務員が盗みを働くという罪悪感に駆られながらも、これも世のため人のためと自分を納得させようとするが……料理中に指を切り、出血していた柊は、血が巻物に付いた瞬間、またしてもあの“幽廓”へと飛ばされてしまう。そこで思わぬ親切心で人助けをしたと思ったら、大炎上に発展してしまった。巻物を盗まれたことに気付いた烏が“幽廓”へ駆けつけるも、時既に遅し。「絶望的」と言った烏は、続けて言う。「アイツはもう、バケモノだ」と。

 柊と烏は異母兄弟。ということは、2人には同じ父親の血が流れていることになる。物語が進むにつれ明かされるのは、柊が死んだと思っていた父親は妖怪──つまり2人は、“半人半妖”なのだということ。しかし、烏は父親を長年憎み続け、彼を殺すためだけに生きてきた。そのために妖怪を飼い慣らし、金を貯めていたのだが、いざ父親と会えたと思えば、烏は「失敗作」なのでいちいち覚えていないと言われてしまう。逆に柊は「我が愛し子」と呼ばれて……。カワドウ青年まで操ってしまう“妖怪の王”の父に、果たして烏は抗えるのか!? そして思わぬ形で実の父親に再会してしまった柊の運命は!?

 先日最新刊第2巻が発売されたところだが、早く続きが読みたいと気になって仕方がない。カワドウ青年の正体はいつ明らかになるのかも、個人的に興味深いところである。だってイケメンだし(笑)。
(文/桜木尚矢)

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