『7thGARDEN』マンガ版『あの花』作者・泉光の最新作は、美麗なタッチで描く“新世代のダークファンタジー”

 実写化も果たし、劇場版も上映された大人気アニメ、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以後、『あの花』)の漫画版を手掛けた泉光の最新作、『7thGARDEN』(集英社)は、新時代のダークファンタジーという位置づけだ。少女漫画に影響を受けたと言われる、美麗なタッチの絵柄でのバトルシーンには迫力があり、流血でさえ美しい。『あの花』で連載デビューするまで、読切ばかりを描いてきた泉氏にとっては、いよいよ“画力の本領発揮”といった2度目の連載であり、自身初のオリジナル作品の連載である。

 2011年に『フィフス・ドーン-Fifth dawn-』でデビューするも、これまで描いてきた読切作品は単行本化されておらず、『あの花』がデビュー作だと思われがちな泉氏。しかしオリジナル作品では主にファンタジー作品を手掛けているため、平和な日々の合間に挿入されるバトルシーンや、極上の笑みの後の怒りの表現など、まさにファンタスティックで艶容な描写が『7thGARDEN』において堪能することができる。この作品はあえて『あの花』のイメージを捨てて読んでみると良いだろう。

 物語の舞台は、その“星”に住む人々が皆、神の存在を強く信じていた時代。天使を称え、悪魔を恐れていた。小さな村にある屋敷の庭師・アウィンは、普段はおとなしく優しい笑顔を持つ、善良な青年である。使用人たちとも良い関係を築き、お嬢様であるマリィを誰より大事にしていた。ある日“仕事”の最中に深い穴に落ちてしまったアウィンは、そこで見つけた、蔦に覆われた美少女を目覚めさせてしまう。それが“悪魔”だとも知らずに……。

 事実、アウィンはもう神も天使も悪魔も信じてはいなかった。幼い頃に理不尽に父と母を亡くし、信仰心など捨ててしまったのだ。誰も自分を救ってはくれない、それならば自分が強くなるしかないと決めていた。しかし、ヴィーデと名乗る悪魔はアウィンの過去を知っている。そして彼の胸の中に渦巻く怒りの念の深さも。そしてかつてと同じように理不尽に、大事なマリィを奪われそうになった時、アウィンは決めた。悪魔・ヴィーデのしもべとなり、自分の大事な庭を守るということを──。

 ヴィーデには殺したい6人の天使がいた。天使はヴィーデと同じように、彼らが“小人”と呼ぶ人間に憑き、世界を変えようとしている様子。天使には本当の名前と通称があるようで、このあたりが少しややこしくはあるが、ヴィーデにもまた、「マリアンヌ」というすでに捨てた名があった。彼女の心の中にもさまざまな葛藤があったが、天使の中の一人、レイルを殺して以来、自分をさらに奮い立たせる。甘い言葉も、過去の思い出も、もう彼女には通じないはずだったのだが、お人好しのアウィンのせいで、なんとなく調子を崩されてしまう。しかしそれはアウィンや自らの命さえ落としかねない、重要な事案だった。

 第3巻のヴィーデのセリフで、「7thGARDENは私のものだ」というものがある。タイトルを含んだ意味深なこの言葉は、一体何を意味するのだろうか? このままヴィーデと天使たちとの全面戦争になりそうな雲行きだが、謎はまだまだ眠っている。アウィンの中にいる何者かの存在や、ヴィーデの味方であるイオラとリズという存在。そして徐々に明かされていくアウィンの過去。“殺人鬼(あくま)の息子”と呼ばれていた幼いアウィンが、マリィたちのもとに引き取られるまでの経緯は非常に重要だ。

 天使と悪魔の戦争に人間が巻き込まれる……というだけの単純な構成ではないのが『7thGARDEN』である。アウィンの守る屋敷の人々にもそれぞれ深い闇のような過去があり、それがまたアウィンを縛る。アウィンは悪魔のしもべになるには優しすぎる青年だったが、その反面、戦いの能力には秀でていて、それもまたある人のおかげであった。だからすべてを守りたい。誰にも傷つけさせたくない。この小さくて幸せな“箱庭”の中だけは──! ヴィーデと唯一一致する価値観でつながっている2人は、これから強大な力を持つ天使とどのような戦いを繰り広げていくのだろうか。不安と期待で、ワクワクが止まらない。
(文/桜木尚矢)

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