ペッパーがアメリカで“店員デビュー”! ロボット社会が加速するか!?

 月に一度発表されるアメリカの雇用統計は、為替や株価にも影響を及ぼす重要な指標だが、今後は労働者として数えるのは人間だけではなくなる!? そう、ロボットの雇用が急激に進むかもしれないからだ。

■ペッパーがアメリカの家電店で“店員デビュー”

 アメリカ・カリフォルニア州パロアルトの家電量販店「b8taストア」で接客を担当する店員として、ソフトバンクの人型ロボット、ペッパー(Pepper)が店頭で業務にあたった。8月11日から18日までの“体験入店”ではあったのだが、その働きぶりはなかなか評価が高かったようだ。

 すでに日本ではあらゆる場所で試験的に“社会人デビュー”しているペッパーだが、意外なことにこれまでアメリカではあまり注目されてこなかった。もちろんアメリカでも自動車工場などでは積極的に産業ロボットが導入されているが、ペッパーのようなサービス業で働く“接客ロボット”はこれまであまり真剣に考えられてこなかったようだ。

ペッパーがショップ店員に。動画は「CNET」より。

 ショップを訪れたお客に積極的に話しかけるペッパーだが、自らのセールスポイントでもある感情認識能力についてもことあるごとにアピールしていて「笑顔を見せてよ!」というリクエストも投げかけている。人間の店員ではまず口にしないようなセリフも、大目に見てもらえるアドバンテージを活かしてか(!?)、なかなか大胆な接客を繰り広げたようである。

 今年オープンしたばかりの「b8taストア」は、主に情報家電製品を展示、販売するショップなのだが、面白いことに展示製品の前に来店客を一定時間留まらせることで、製品のメーカーから広告収入を得るというシステムが導入されている。必ずしも実際の販売に結びつかなくとも、来店客をある程度の時間引きつけておくことができれば、その時間によって収益を得らるスキームで運営されているのだ。このように来店客をなるべく長く店内に引き留めておくのは、ペッパーにはうってつけの業務なのかもしれない。

 この1週間の“体験入店”で、ペッパーの勤務評価が高いものになったとすれば、一躍アメリカもペッパーが活躍する社会になるのかもしれない。「Tech Republic」の記事によれば、年内にもソフトバンクがアメリカでのペッパーの販売・活用について何らかのアナウンスを行うことが見込まれているという。

■ロボットの普及で人間の仕事も増える

 ロボットと人工知能の“社会進出”で懸念されているのが、将来、人間の仕事が奪われるのではないかという不安だろう。

 これに関してこれまでもさまざまな予測が行なわれていて、「次の20年で50%の仕事がロボットと人工知能に置き換えられる」や、「2045年にはロボットが職場から人間を追い出す」、「高級取りの医者がロボットの一番の犠牲者になる」など、今にも大多数の労働者が“戦力外”の存在になってしまうかのような物言いが続いている。

 しかし、そんな懸念を払拭する記事がこの6月の米紙・ワシントンポストに掲載されている。“ロボットが仕事を奪う”という懸念は、ここ最近の問題ではなく、ずっと前の社会でもすでに起こっており、人々はそれにうまく適応しているというのだ。“ロボット”と呼べば、いかにも最先端の問題であるかのような感を受けるが、広い意味での生産能率と省エネ技術の向上、つまり、技術革新は蒸気機関が発明された頃から労働生産の現場で絶えることなく続いている。そして、この労働構造の変化に、細かい部分で不具合は出てくるものの、おおむね人間はうまく適応しているということだ。

 フォードは1961年から生産ラインにロボットを積極的に導入しているが、それで人間の労働者が極端に減るということはことはなく、いわば人間の仕事の役割分担が変ったと解釈できることになる。また昨今、飲食店などを中心に日本でも人手不足が叫ばれているが、アメリカでも時間給の仕事は2010年から1,400万件も増えているということだ。

 そしてロボットと人工知能の“社会進出”が進んでいる現在、サイバーセキュリティという分野で、人間がやらなければならない仕事が増えている。つまり技術革新が起って今まで人間がやっていた仕事が機械に移りゆくなかで、人間の側にも新たな仕事が生まれてくるということである。

 今後、自動運転の自動車は確実に普及してくるのだが、メジャーになるまでにはまだ相当な年月がかかり、その間に人間側の仕事も増えてくるということだ。たとえば未来の社会でコンビニエンスストアなどへの商品を納品する際、もし自動運転のトラックが運んでくるとすれば、受け取る側がトラックまで商品を取りに行かなければならなくなるだろう。これによって店側の作業が増え、店員を増やさねばならないケースも考えられる。ちなみにミシガン大学の調査では現在、自動運転車を望んでいる人々は16%に過ぎず、半数近くのドライバーは自動運転技術をまったく望んでいないということだ。

 しかしながら、ここ数年の人工知能の進歩はこれまでの産業界の技術革新とはレベルが違うという主張もあるのだが、どうやらロボットや人工知能が労働者を脅かすにはまだ多少の“執行猶予”があるということだろう。その間にどのような備えをするのか、まさに働く者全員に問われていそうだ。
(文/仲田しんじ)

【参考】
・Tech Republic
http://www.techrepublic.com/article/robot-invasion-softbanks-pepper-lands-in-the-us/
・Washington Post
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-robot-invasion-that-isnt-yet-here/2016/06/01/3fb9bd1a-280b-11e6-b989-4e5479715b54_story.html?utm_term=.296a199c1a3b

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