■収集に1年間かかっていたデータが1分間で収集可能に
具体的にこのゲームのどのようなデータが研究に有用なのか? それはゲーム中の船の航路を可視化グラフ(ヒートマップ)にできることが挙げられる。つまり迷路状になったマップ上で人気のある航路や、典型的な“迷い方”などが浮き彫りになってくるのだ。このビッグデータをもとに、初期の認知症で現れてくるナビゲーション能力の低下を解明する研究が行なわれているのである。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者によれば、この『Sea Hero Quest』のおかげで、これまでなら1年で200人分しか取れなかったデータを、日によってはなんと1分間で収集できてしまうということだ。
「このプロジェクトは、異なる国や異なる文化を持つ人々数千人分の3Dナビゲーションデータという、予期しない研究のチャンスをもたらしてくれました」と語るのはユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのヒューゴ・スピアーズ博士。このビッグデータを分析することで、認知症の初期症状を突き止めると共に、3D空間での行動において何が“普通”の行動なのかを紐解く糸口にもなるということだ。
わかりやすく言えば、初めて訪れた環境で一度通った道筋を、しばらくのあいだ覚えていられるかどうかでナビゲーション能力が計測できることになる。実生活でこの能力が低下すれば、初期の認知症患者に多いといわれる“迷子”になりやすくなってしまうのだ。このようなナビゲーション能力をこのゲームによって数値化でき、認知症の初期症状の解明に結びつけるのが研究チームの狙いだ。そしてこの『Sea Hero Quest』によるビッグデータを分析した最初の研究がこの11月にも発表される予定であるという。研究発表がどのような内容になるのか大いに気になるところだ。
(文/仲田しんじ)
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