ゲームで最新リハビリ療法と同じ効果!? ビデオゲームでひらける統合失調症治療への道！

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記事を伝える「BBC」より。

　今となっては懐かしい、ニンテンドーDSのヒットゲーム『脳を鍛える大人のDSトレーニング』をはじめとする一連の“脳トレ”ゲームだが、やはりビデオゲームは何かと“脳にいい”ようである。

■ビデオゲームはリハビリと同じ効果をもたらす

　4月16日に神経科学系の学術誌「Neuroscience & Biobehavioral Reviews」に掲載された論文で、スイスの研究チームは現在統合失調症患者に対して行なわれている治療法と同じ効果が、ビデオゲームをプレイすることによってもたらされていることを報告している。ビデオゲームが精神疾患を治療する効果があるということだ。

　統合失調症の症状には、幻聴や幻覚、被害妄想など引き起す陽性症状と、社会的引きこもりや無関心などを招く陰性症状、そして記憶力や注意力、思考力などが低下する認知障害の3つがある。そして認知機能の改善を図るために現在注目されているリハビリテーションプログラムが、認知機能改善療法（Cognitive Remediation Therapy、CRT）と呼ばれる治療法なのだが、この治療法を同じ効果をビデオゲームをプレイすることで得られるという。

　研究チームは、市販のビデオゲームを楽しんでいる者と、CRTプログラムを受けている者の脳をMRI（Magnetic Resonance Imaging、磁気共鳴画像）で撮影した脳機能イメージングを比較検証した結果、両者の脳の同じ部分の灰白質（gray matter）が高密度であることを突き止めたということだ。この部分の灰白質は日常生活における認知機能に関係していると言われている。つまりビデオゲームをプレイすることで、認知機能を向上させることができることになるのだ。そして精神疾患の治療においても、より身近にできる“ビデオゲーム療法”という選択肢が現実味を帯びてくるものになった。

　まだまだ今後の研究が必要だということだが、再び“脳トレ”ゲームのブームが起ってきてもおかしくない事態を迎えているのかもしれない。

■ビデオゲームで「エピソード記憶」力が向上する

　同じ分野の研究は昨年にも発表されている。英ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授が主導する研究チームが昨年8月に、「Philosophical Transactions of the Royal Society B」で発表した研究によれば、“脳トレ”用のビデオゲームが統合失調症患者の日常生活の質を高める可能性があることが報告されている。

　研究チームがこの研究のためにゲームクリエイターと共同で開発した特別な“脳トレ”ゲームを使って実験が行なわれ、4週間にわたってこのゲームをプレイした患者の記憶力、学習能力が向上したことが判明したのだ。

　特に機能が向上したのが「エピソード記憶」の能力。エピソード記憶とは事実や知識に関する記憶とは異なり、ある出来事を物語的に覚える記憶で、情景や感情などの記憶も含まれる。また、このエピソード記憶は日々の日常生活にとって不可欠な記憶でもある。

　日々の習慣化した行動においても、例えば向かった先の駐車場で毎回駐車する場所が変わったり、朝雨が降っていたので傘を持参したりと、当然のことではあるが我々は毎日微妙に違う行為を行なっているが、このちょっとした違いの記憶を一定期間留めるのがエピソード記憶である。明日になったら忘れていてもいいような類の、この些細な記憶がないことには、日常生活にかなりの支障が生じることは想像に難くない。つまり今朝どのへんに車を停めたのか、朝に傘を持っていたかどうかをその都度最初に立ち返って確認しなければならないとなれば、日常生活を送るのもかなり面倒くさいことになる。

　統合失調症患者は、このエピソード記憶の障害も抱えていることが多いといわれており、これが日常生活を少し難しいものにしているのだが、ビデオゲームによって障害が緩和、治療できるとすれば画期的な出来事になるだろう。しかも薬物を使わないので副作用の心配はほとんどないことになる。意外にも精神医療の分野で注目されることになったビデオゲームの効能だが、ひょっとするとまだまだ我々の知らない可能性を秘めているのかもしれない。
（文／仲田しんじ）

【参考】
・BBC
http://www.bbc.com/news/health-33736760