小児がんと闘い抜いた我が子の短い生涯を父親になって追体験するゲームが話題に

■ジョエル君と両親の闘病の日々を綴ったドキュメンタリー映画が映画祭で上映

『That Dragon, Cancer』は世界最大のゲームイベントである「E3 2013」内の、独創的なインディーズゲームが並ぶ「IndieCade」でコンセプトが出展されて多くの注目を集め、開発計画が具体化することになった。そして2014年にクラウドファンディング「Kickstarter」のキャンペーンとして立ち上げられ、3687人の出資者から目標の8万5000ドルを上回る10万ドル以上の投資を集めて同年12月にファンディングは成功。2015年いっぱいを費やして制作されることになる。

 一方、ジョエル君とグリーン夫妻の闘病の日々とそれに続くゲーム制作というチャレンジングな奮闘が、ドキュメンタリー映画監督のデイビット・オシット氏の目に留まり、夫妻の体験とゲーム制作の模様を追ったドキュメンタリー映画『Thank You for Playing』の製作に至り、2015年4月に米・ニューヨークで開催されたトライベッカ映画祭で上映されたのである。ジョエル君が亡くなったわずか1カ月後のことであった。

映画『Thank You for Playing』トレイラー 「MIFF」より

 ジョエル君の父であり『That Dragon, Cancer』の作者であるライアン・グリーン氏によれば、このゲームはインタラクティブな“ポエム”であるという。

「このゲームを構想する前、ジョエルの看病をはじめた時からポエムは私の表現行為になり、息子の闘病中ずっと続きました」と、ライアン・グリーンはゲーム情報サイト「Engadget」で語っている。

「私にとってポエムは、最初の着想を得てそれに続く深い理解をもたらしてくれるもので、これはゲーム作りと同じなのです。…(中略)…深い悲しみはしばしば、その中でより多くのことを学ぼうという姿勢と、事態を客観的に見る目を同時に与えてくれます。本作の表情のないポリゴンの登場人物たちと共に、最も深い悲しみの中にあってもそこには単なる悲哀と悲痛な切望以上のものがあることを見出してほしいのです。暗黒の闇の中にあってもそこには楽しみと希望があり、それらの体験すべてをひっくるめたものが人生なのですから」(ライアン・グリーン氏)

 まさに“文芸ゲーム”とでも呼べそうな『That Dragon, Cancer』だが、クラウドファンディングが定着した今日のゲーム制作環境が、このような作品の登場を後押ししていることも確かだろう。ともあれこうしてゲーム表現の幅がどんどん広がってきていることは歓迎すべき事態だ。
(文/仲田しんじ)

【参考】
・Engadget
http://www.engadget.com/2015/12/22/that-dragon-cancer-release-date-pancakes/

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