『のぼる小寺さん』キミは小寺さんの“イイ女っぷり”を理解できるか?

 オビの「登っているのを見てるだけ!」というキャッチが目をひくマンガ『のぼる小寺さん』(講談社/著:珈琲)。表紙のヒロイン・小寺さんのセーラー服姿に心臓を打ち抜かれ、今月絶対に読まねばならぬ作品の筆頭に! だって、上着がはだけて、おへそが見えているところとか、微妙な汗とか、少々あざといけどハアハアしてしまうのである……。

 物語のヒロイン・小寺さんはボルダリング部に所属するクールな少女。ボルダリングといって、まず脳内に浮かぶのは「サラリーマンやOLが会社帰りにジムでやってる、余暇のレクリエーション」のイメージ。

 しかし、小寺さんのやるボルダリングは、まったく違う。クールな雰囲気の彼女は、心底部活に一生懸命なのだ。そんな彼女の姿を見て、人々が思わず「自分も頑張らなきゃ」と発憤するというのが、本作の基本的なストーリーである。

 この基本プロットは、ある意味スゴイ! ドラえもんはひみつ道具で、山岡士郎は料理で、レイプマンはレイプで問題を解決して、人の心をも揺り動かす。ところが、この作品では小寺さんはボルダリングをするだけなのに、周囲の登場人物が勝手に発憤しちゃうのである。

 嫌々入った卓球部で漫然と部活に参加するだけの近藤くんは、小寺さんの姿を見て部活に精を出そうと心を入れ替える。学校をサボり気味の倉田さんは、ちゃんと卒業してネイリストになろうと決心する。

 もちろん、小寺さんには「彼らに発憤してもらいたい」というような意図はないし、会話すら頻繁に交わしているわけでもない。けれども、なぜかみんな小寺さんからやる気をもらって変異してしまう。ひたすら小寺さんの“人間力”というヤツに驚くばかりだ。

 こんな素敵な女の子なのだから、男子も目が離せない。中でも、同じボルダリング部の四条君は小寺さんと同じ中学校出身で、卒業式の後、彼女に告白した過去の持ち主である。その時の小寺さんからの返事は、涙を流しながらの「ごめんなさい」。その後、同じ高校へ入学したから、本当なら相当気まずいはず。でも、再会した四条君に、小寺さんは「四条君もボルダリングやるの?」と、過去(といっても、卒業式の後だから数週間前)をすっかり忘れて声をかける。こうして、四条君も過去は過去として、ボルダリングに精を出すこととなる。

 これも小寺さんの魅力が爆発している瞬間である。男女の恋愛感情の中で生まれがちな“気まずさ”というものと小寺さんはまったく無縁なのだ。なんとも気持ちのいい女性ではないか! 普段は無口でクールな小寺さんの本当の魅力を早くから見抜いていた四条君は相当なイケメンだ(心が)。

 本作が教えてくれるのは、「本当にイイ女とは何か」というものである。小寺さんの魅力を理屈じゃなくて直感で理解できたなら、読者自身も人間として成長できるはずだ。
(文/ビーラー・ホラ)

のぼる小寺さん(1)

のぼる小寺さん(1)

そんな小寺さんを見てるだけ。

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