Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第33回

空条承太郎の登場、DIOの復活、チーム戦…面白くないわけがない『第三部』が教えてくれたこと

ーー今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

150712_jojo.jpg(イラスト/村田らむ)

 ジョセフ・ジョースターが奇跡的な生還を遂げて、『ジョジョの奇妙な冒険』の『第二部』は幕を閉じた。

 そして、そのままシームレスで舞台を現代に移し、『第三部』が始まった。

 現代が舞台と言っても、1989年である。もう30年近く前だ。『第二部』の最後は、老人になったジョセフ・ジョースターが、日本に渡航するくだりで終わる。その時、“現代”の象徴として、ソニーのウォークマンが出てくるのだが、久しぶりに読むと懐かしかった。

 当時、僕は高校生で、やっぱりウォークマンを使っていた。聞いていたのはビートルズじゃなくて、録音したオールナイトニッポンだったが。

『第三部』が『第一部』『第二部』と決定的に違う点は、“スタンド”の登場だ。幽波紋と書いて、スタンドと読ませるのは、初期のジョジョの名残だ。

 超能力を具体的なビジュアルにして見せるという手法は、とても新鮮だった。『第二部』までは波紋という超能力だけが武器だったが、『第三部』以降はさまざまなバリエーションの能力が使えるようになった。能力モノのマンガのはしりである。『第三部』の第一話を読んで、絶対に傑作になると確信した。

『第三部』の主人公は、ジョセフ・ジョースターの孫にあたる、空条承太郎。『第三部』にして、初めて日本人が主人公になった。スタンド能力は、パワーと精密さを兼ね備えたスタープラチナ。本人もスタンド能力のデザインもとてもカッコイイ。おそらくジョジョシリーズの中で、もっとも人気の高いキャラクターである。

 そして、敵は100年の時を超えて蘇ったDIO。DIOはジョナサン・ジョースターとの最後の決戦の際、身体を乗っ取り、海底で生き延びていたのだ。そうして、スタンド能力も手に入れていた。

 過去の敵の復活という手法はあまり好きではないのだが、稀代の悪役であるDIOの復活は正直、ワクワクした。

 ジョナサンの身体を乗っ取ったという時点で、すでに子孫にとっては腹が立つが、スタンドの悪影響で承太郎の母親であり、ジョセフ・ジョースターの娘である空条ホリィの生命が危機にさらされる。

 もって50日。それまでにDIOを倒さねばならない。世界が征服されるなんて抽象的な事態よりも、娘、母親を助けるモチベーションのほうがずっとわかりやすく、共感できる。

 スタンド能力以外に変化した点と言えば、初めてのチームバトルだということだ。『第二部』までは(『魔少年ビーティー』『バオー来訪者』を含めても)、主人公がひとりで戦う物語だった。ツェッペリ、リサリサ、シーザーなど、味方はいたが、あまり活躍はせず、強敵を倒すのは飽くまで主人公だったのだ。

 しかし『第三部』では、空条承太郎、年老いたジョセフ・ジョースター、ジョセフの友人であるモハメド・アヴドゥルの3人から始まり、敵として登場した花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフ、中盤戦に犬のイギーが加わってチームは完成した。

 全体的なモチベーションは、先に語った通り、DIOを倒して母の命を救うことだが、キャラクターそれぞれにもモチベーションがあったのも良かった。ポルナレフの「虐殺された妹の仇を討つ」という目的は、読者的にはとても同調できるものだった。

 敵のスタンド使いの能力は未知数で、毎回なんとか弱点を探し、工夫をして敵を倒さなければならない。その工夫をして勝つというバトルが、ドラゴンボールなどの“パワーが強い者が基本的に勝つ”というバトルとは決定的に違い、見ていて飽きなかった。

 ただ、今読み返すと、かなり強引な勝ち方をするバトルもあって、「勝ち方を決めずに書き始めたのかな?」と思うものも正直あった。詳しくは書かないが、チームものでは最大に盛り上がる仲間の死も、『第三部』ではとても“効果的”に描かれていた。

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