『たまらん ! メチャクチャな青春ラブコメに巻き込まれたけど、生まれてきてよかった。』ヒロインよりオカンが気になる…

『ギャルゴ!!!!!』シリーズ以来、笑いと感動、そしてニヤニヤしてしまう恋愛の楽しみを提供してくれる作家・比嘉智康の新作ライトノベル『たまらん! メチャクチャな青春ラブコメに巻き込まれたけど、生まれてきてよかった。』(共にKADOKAWA メディアファクトリー)。

 タイトルで説明されている通り、メチャメチャな青春ラブコメです。だって、通称「たまらん」こと、主人公の玉木走太(“玉”で“走”=RUNだから「たまらん」。下ネタ的な意図はないそう)は、プロローグで早くも余命一週間を宣告されてしまいます。

 でも、玉木は“ラノベ主人公”のテンプレ、「冷笑的な性格」とか「友達がいない」みたいなのとは真逆です。そのため、玉木の余命が一週間ということを知った、老け顔の志村誉、見た目はDQNなのにヲタクな庵藤充、隣に住む柔道少女・若芽靜香という、男2人女1人の親友らは、玉木の余命の中で良い思い出をと「生まれてきてよかった会」を立ち上げてくれます。

 そして、玉木に「生まれてきてよかった」と思ってもらうため、3人は、玉木が密かに想いを寄せている学校一の美少女・月形嬉々との二人っきりの時間をセッティングするのです。そこで、キスまで持ち込むことに成功。嬉々に「……こんなにお乱れ千万なことしたの、初めて」とまで言わせちゃいます。このヒロイン、時折妙な言葉遣いになるのも萌えるポイントです。

 という物語がプロローグ。そして、本編はここから! 「生まれてきてよかった」と死ぬ準備が出来たのに、「余命一週間」は完全な誤診だったのです! 健康体です。ここまでやらせておいて「誤診でした」なんてボコられそうですが、心底いい人たちな親友たちは玉木の無事を心の底から喜んでくれます。親友たちだけは……。

 人生最初で最後のキスの相手だったハズの月形嬉々はそうではありません。「私は貴方に冥土の土産にキスしてあげたの。なのに貴方ときたら冥土にいない。嗚呼、本当に参ったわ」と、吐き捨てる嬉々。そして、嬉々は玉木ではなく、彼の親友・誉が好きだということがわかるのです。かと思えば、誉は購買部を切り盛りしている色鳥いろりが好きだったり……という感じで、登場人物たちの入り乱れての、思い通りにならない恋模様が描かれていきます。

 こんな妙な設定の中で、読者を物語世界に引きずり込むのは、本編にはあまり関係ない無駄な設定だったり、無駄なツッコミだったりします。例えば、プロローグで玉木家は母子家庭であることがわかります。情報としてはそれだけでいいはずなんですが、「俺のオカンはボディービルダーだ」というよくわからない設定が明かされます。余命一週間の辛さも「筋肉のためなら、調味料もろくすっぽかかっていない高タンパク低カロリーの食材だって幸福そうにむさぼるオカンの、食欲の失せた姿なんて見ていたくはなかった」と描写されます。

 このオカン描写のインパクトがありすぎて、メインヒロインの嬉々がかすんでしまっています! イラスト担当の本庄マサトさんのカラー口絵では、しっかり下着姿のヒロインも描かれていて、本編ではどんなことになるのか、ドキドキしていたのに、オカンのインパクトにかき消されてしまいましたよ!!

 この作品、まだまだ入り乱れた恋模様が続くようですが、とりあえずオカンの再登場に期待したいです!
(文/大井候)

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