ディズニー/ピクサー映画『インサイド・ヘッド』の2人の監督が明かす、ピクサー映画製作の裏側とは

■『インサイド・ヘッド』は製作に5年を要した

150713_insideout_4.jpg『インサイド・ヘッド』より。©2015 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

 オリジナリティや強烈なアイデアはクリエイターには必要不可欠だが、「風変わりすぎるアイデアは観客がついてきてくれない」。

 そう語るドクター監督は、新しい企画を思案中にどうしたかというと、アイデアのきっかけを自身の11歳の娘から得たのだ。

「娘は11歳になったら、だいぶ控えめな女子になった。変化が訪れたんだ」

 ドクター監督はそのとき「11歳の子供の頭の中を描きたい」と思い、映画『インサイド・ヘッド』はスタートした。コンセプトを考え、カードメモにぎっしり書き込み、それをボードに張り付けていく。ボードに張り付けられた大量のメモの写真がモニターに映し出されたが、こうやってスタッフで集まり、アイデアを話し合い、試行錯誤を続けて物語が練り上げられていくのだ。気が遠くなりそうな作業だが、この繰り返しで、物語もキャラクターもアートワークも練られて、完成形に近づいていく。ある程度出来上がったところで、ピクサーのスタッフにお披露目。しかし、大抵、もっといいものができるはずとやり直す。そしてまたスタッフにチェックしてもらい、やり直す。この繰り返しだそうだ。

 カルメン監督は「大切なのはトライ&エラーを繰り返すこと。これは間違いを見つけることではなく、問題点を発見できる重要な作業なんです」。結果、『インサイド・ヘッド』は完成までに5年かかったと語っているが、ピクサー映画の製作現場にとって、この期間は別に珍しくもないそうだ。

■物作りに大切な3つのこととは?

150713_insideout_5.jpgピート(写真左)とロニー(右)。

 監督は主張が強い、ワンマンという印象があるが、目の前の2人は実にうまが合う、いいコンビに見える。会場からの「2人の共同監督でうまくいくコツは?」という質問に、ドクター監督は「ひとりでできる作業なら2人も監督はいらない。なぜ2人かというと、アイデアを出し合って、違うと思ったらお互いに話し合い、そこから何かが生まれるから。主張を通すためにいる相手ではなく、作品をよりよくするために2人必要だったのです」

 また大勢のスタッフを動かすために、リーダーとしてのアドバイスは? との質問には「部下に仕事を頼むとき、ただ指示をするだけでなく、その人のオリジナリティが出せる余白を残して任せることが大切だ。部下がイメージをして、アイデアを出せるようにしてあげる。彼らが自分の作品だと思いながら仕事をできるようにね」

 そしてカルメン監督は「僕はアニメーションの教育を受けていない。ピート(・ドクター監督)が僕を使ってくれたから今がある。ピクサーの中にはたくさんのスタッフがいるのに、僕を選んでくれた。人がチャンスを運んでくれるんだ。そして上達するために重要なことは3つある。ひとつ目は“とにかく作ること”、2つ目は“それを必ず完成させること”、3つ目は“人に見てもらうこと”。だって人に見せたら、必ずその人はコメントするだろう? そこから学ぶこと。それが上達するために必要なことです」

 ドクター、カルメン両監督ともにピクサーでの仕事の裏側を語ってくれたわけだが、そのアドバイスの数々は映画やアニメーションに関わっていなくても、人とのコミュニケーションや仕事への取り組み方など、全ての人々に通じる話のような気がした。やはりいい作品を手掛ける監督は人間力が高い。ピクサーでもトップクラスの2人なのに、努力を積み重ねることを当然と思い、決して地位にあぐらをかかない。その誠実さは、作品にも十分に表れている。
(取材・文/斎藤香)

■『インサイド・ヘッド』
2015年7月18日より全国ロードショー

 11歳のライリーの頭の中にはヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカという5つの感情が存在する。見知らぬ土地へ家族で引っ越しをしたライリーは、友達もできず、楽しいことがひとつもなく辛い毎日を送るように。不安定になったライリーの頭の中の感情たちは、彼女に幸福になってほしいあまり、混乱し、トラブルが起こる…。

http://www.disney.co.jp/movie/head.html

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