『ラブホの上野さん』絶えることなき恋愛指南書の血が脈々と! Twitter発の異色マンガ

『ラブホの上野さん』絶えることなき恋愛指南書の血が脈々と! Twitter発の異色マンガの画像1ラブホの上野さん第1巻(KADOKAWA メディアファクトリー)

 ネットで話題となった作品が、商業誌で連載→単行本になるという流れはもはや珍しいことではない。けれども、「月刊コミックフラッパー」(KADOKAWA メディアファクトリー)で連載中の『ラブホの上野さん』(漫画:博士 原案:上野)はひと味違う。本作は、Twitterで話題の「上野 ラブホスタッフ」(@meguro_staff)なる人物のツイートを原案に生み出された、恋愛指南マンガだ。

 都内のラブホスタッフを名乗る上野さんは、日々、職場を中心に見聞きしたエピソードを元に、教訓や至言をTwitterでツイートし続けている。

 教訓や至言とはいっても、上から目線だったり、押しつけがましいものではない。あくまでサービス業の精神から述べられるのは、男女の関係において何が粋であり、何が野暮であるか、というアドバイス。その粋に気づき実践できる者は、意中の女性をホテルへ連れ込み、目的を達成することができるというわけだ。

 そうしたツイートを元に制作されたマンガでは、ラブホテル「五反田キングダム」のスタッフ・上野さんが勝手に周囲の人を指南するスタイルで、さまざまな恋愛テクを教え込んでいく。

 女性をホテルへ連れ込むテクとして、まずやるべきことは「手をつなぐ」ことだと、上野さんは言う。これには作中の人物もいきなりハードルが高くないかと困惑するものの、上野さんは続ける。「大事なのは手をつなぐタイミングです」「オススメなのは食事をすませ店から出た直後」だと。さらに、ドン引きされた場合には「なに本気にしてんの?(笑)」と、相手に責任を押しつければいいとまで。

 ……なんて、役に立つのだろう!

 こんな具合に、本作では一冊丸ごと男女の恋愛テクがさまざまに示されている。ナンパの時には「え~っと」「あの~」といった、「余計な言葉をつけない」のが重要。恋人を探すときには、「自分のタイプをしっかり煮詰めていくと新たに魅力的な男性に出会ったり、今まで魅力的に見えなかった男性が魅力的に見える可能性がある」とも。ちなみに、このシーンでは表組みまで使っていて無駄に説明が丁寧なので、読んでいて「まったくその通りだ」と、読者の誰もが納得するだろう。

 また、漫画担当の博士氏の遊び心なのか、途中でキャラが突然、喪黒福造風になったり、水島新司先生のキャラ風になったり……。単なる解説マンガではなく、エンターテイメントとしてマンガを楽しんだ上で、恋愛テクを得てもらおうという努力と工夫が満載なのだ。

 もともと“恋愛指南書”というのは、本屋でも常に何かしらの本が出版されているジャンル。特に、全盛期だった1980年代から90年代にかけては、ほぼネタ本と化した恋愛指南書が数多く出版されていた。どれくらいネタ度が高いかといえば、ナンパの手段として「セブンイレブンで、一人で弁当を買っている女性に“一緒に食べませんか”」と声をかけるとか(この記述はマジです)。

 この作品は、今や衰退しつつあるネタ的な恋愛指南書の血を受け継ぎつつ、本気で役に立つ内容に仕上げている。

 この作品を読み込めば、今話題の某氏のように「一度に付き合ったのは80人が最高」という結果も出せるだろう。しかし、やっぱり本当に好きな人とするから、安心して楽しめるんだよ、そういうことは! それこそ至高の快楽であることを、この作品は教えてくれていると思う。早く続刊が出ないかな。
(文/是枝了以)

ラブホテル進化論 (文春新書)

ラブホテル進化論 (文春新書)

スタッフも進化しているのかもしれない…。

『ラブホの上野さん』絶えることなき恋愛指南書の血が脈々と! Twitter発の異色マンガのページです。おたぽるは、漫画マンガ&ラノベ作品レビューの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!