海外の方が盛り上がっている!? NIGOROの 楢村匠氏に聞く、日本における“インディーゲーム”の注目度と課題【後編】

――日本の作品なのに……。変な感じがします。

楢村 悲しいですが、今取れる手段としては海の向こうで人気になって……映画で例えると「全米が泣いた!ナンバーワンゲーム」のようになって、日本に帰ってくるくらいしかないかなと(笑)。日本でインディーゲーム作品が広まるのは遅いし、作品が広まる早さを考えると、海外でリリースするって手段も選んでいる感じです。それと、海外の企業は行動が速いですね。目を付けたら、すぐメールをします。具体的な仕事のプランとか企画書とかじゃなく、面白そうだから声をかけたっていうレベルで(笑)。実際、仕事をし始めると、日本式のビジネスと違って釣り合わないところがあって困ることもあります。全然急いでくれないとか(笑)。けど、行動力とかはすごいですね。日本の企業とは、そういうところも違うと思います。などと考え行動していると、一部の人からは、「お前ら日本を切る気だな」とか言われます。ですが、私たちも日本人なので「日本で売れるのが一番いいんですよ」と返しますが。

――「INDIE STREAM FES」も、国内でインディーゲームを盛り上げるためにやっていることなのでしょうか?

楢村 「INDIE STREAM FES」は、単純にクリエイターの横のつながりを作ろうと動き始めたイベントです。去年の「東京ゲームショウ2013」から始まり、内部でも協力し合って自転車操業のような感じでやっています。もともとは『TENGAMI』という日本の伝統的な素材の和紙を使った絵本風アドベンチャーゲームをリリースしているNyamyamの東江亮(あがりえりょう)氏と意気投合して「クリエイターのつながりを、もっと強化しよう」ってところから始まったんです。イベント後にクリエイター同士で飲み会を開いても人が全然集まらなかったところも、危機感を覚えましたし。個人個人でやっていると情報が少ない部分があるので、日本で開発者同士が連携とれるようにと思ったんです。例えば、うちならKickstarter(資金調達を可能とするクラウドファンディング)や、「海外で販売するノウハウや、あそこの会社には苦しめられた(笑)」といった情報を、ほかの人へ教えられますしね。

――そんな「INDIE STREAM FES」には、企業も興味を示しているのでしょうか?

楢村 インディーゲームブームもあって、SONYが興味を持ってくれました。そこで「こういうネタがあるのですが……」と誘ったところ、向こうも乗ってくれて、今年は400人規模のパーティを開催できました。ただ、バックアップしてくれる企業の思惑と我々の考えとで、多少ズレがあります。

――実際に、手ごたえはありましたか?

楢村 今年の場合はインディーゲームの認知度が上がってきたため、ただ集まるだけだとニュースにもならないということで、売る人専門のパーティにしました。“フリーで配るのではなく、売って広めたいという人”と“それをバックアップしたい企業”だけのパーティにしようと考えたんです。

――なるほど。

楢村 ちなみに去年行ったのは発足パーティだけで、特に内容がないというか、集まっただけという感じでした。また、インディーゲームを追いかけようって思ってくれるメディアもまだまだ少ないため、去年は情報があまり目立ちませんでした。そんな中、今年はSONY側の方で、ホラーゲーム『クロックタワー』を制作した河野一二三氏が、“新作を作る”という電撃的な発表を行ったんです。「毎年こういった驚くようなニュースが発表されるから、もっと注目してもらいたい」という手段の一つとして取り入れたのですが、実際ニュースになったのは、そのことばかりでした。本来は、日本のインディー作家が注目を浴びるためのパーティなのですが、ニュースになるのはそういうところばかりなので、そのあたりのズレや、まだインディーゲームが弱いと感じる面がたくさんあります。

――ほかにも課題が出てきたりしましたか?

楢村 あの規模のパーティですと、いろんなメーカーさんから何十万円かずつ出資してもらうんです。すると、メーカーさんからは「スピーチをさせろ」「こういうことをやってくれ」といった要望が出てきます。するともうインディーではなく、普通のゲームイベントになってしまうんです。しかし、自分たちだけだと限度があるし……といったバランス面での課題があります。

――そのような中で「INDIE STREAM FES」ならではなことはできましたか?

楢村 今年からインディーゲーム限定のアワード『INDIE STREAM AWARD 2014』を自分たちで開催しました。ただ1回目なので、“受賞した人が大成功した”という前例もないですし、箔もありません。けれど、続けないとダメだと考えています。選ばれた人が今後有名になれば、この賞が価値あるものになりますから。

――本来の目的である、クリエイターとつながりづくりはいかがでしたか?

楢村 「INDIE STREAM FES」をやったことで、今まで私たちとは別ものだと思っていた同人ゲームの作家の方たちと交流することができ、ネットでのダウンロード販売がメインの私たちに「パッケージ販売をするなら協力する」と言ってくれる方と出会うことができました。あとは、スマホゲームの制作会社の方ともつながりを持つことができました。また、同じインディーの仲間でも、畑違いと思っていた『ファタモルガーナの館』で知られるNovectacle(ノベクタクル)ともコラボし、作品をリリースしました。

――本来の目的は達成できたのですね。

楢村 あとは、海外のクリエイターとつながったところから人を紹介してもらうこともありました。稲船敬二氏(株式会社 comceptおよび株式会社 intercept代表、元カプコン所属で『ロックマン』や『鬼武者』シリーズなどを生み出したゲームクリエイター)とも縁ができ、SCEジャパンのプレジデントにも会いましたし、予測していないところから人脈が増えましたね。そういう人たちから話を聞いて、知識などを得ることもできました。ほかにも、『Million Onion Hotel』を開発している「OnionGames」の木村祥朗氏をはじめ、ゲーム業界のベテランの方たちがインディーゲーム制作にたずさわることが増えてきて、あとから先輩ができるみたいで面白かったです。自分よりかなり年上の人がまだ現役でやっているのだから、自分たちもいろいろやれると勇気つけられましたし、ノウハウも教えてもらえますし。それもあって、業界裏話などの知識がたまりました。

――実際、ほかのクリエイターの裏話を聞くことは、よくあるのでしょうか?

楢村 パーティを開催し、サイトを立ち上げるなどはしていますが、やっぱり直接会わないと良い話は聞けないですね。情報交換・配信サイトといったウェブ上では、本当に話せないことは話せないですし。会社の契約面・売れたゲーム本数など深い話は、実際会っている時や、飲んでいる時にばんばん出てきます。なので、直接会う機会を、もっともっと増やしたいですね。

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