恐怖漫画界の巨匠・楳図かずお、78歳で映画監督デビュー! 母との深い関係を描いた映画『マザー』を通して創作の秘密を語る

1409_mother_1.jpg(撮影/髙橋明宏)

――今回映画を演出して、表現者として映画と漫画の違いを強く感じることはありましたか?

楳図 一番の違いは単純ですが、漫画は動かないというところですね。人物がAからBへ振り返るとすると、映画はAからBに振り返る間にいろいろな状況がついてくるでしょう。でも漫画は人物を振り向かせたかったら「くるっ!」と文字を入れればいいから(笑)。見せ方の違いというのはありましたね。

――なるほど、そうですよね。

楳図 漫画はこちらが描かないと何一つ表現できませんから、全て意図して描かれた絵なのです。でも、映画は映像の中に、こちらが意図しない景色や物が入ってくるでしょう。でもそんな偶然の産物さえ、自分で作った気になってしまう場合があるかもしれない。ドキュメンタリーなど、ある人物を追いかけて起こった出来事をカメラが捉えていた場合、それはカメラの力じゃないかなあと。最初にこういう絵を撮りたいという意図があるかもしれないけど、撮られている方も先に何が起こるかわからないわけですから、そこは勘違いしないように気を付けなければならないところだと思いましたね。

――映画『マザー』撮影中で、ビジュアルへのこだわりはありましたか?

楳図 細かいこだわりはなかったのですが、やはりなんでも映ってしまうので、そこは気を付けました。あと、飛行機や車などの音が入ってきてしまうんですよねえ。今回、家で撮影しているとき、外で人がガヤガヤいう音が入ってきたんですよ。必要なところだけ残しましたが、あとはカットしました。音の問題も、漫画の創作過程ではありえないことです。

――逆に、予期しないことで良かったことはありませんか?

楳図 ありましたよ。オンボロ屋敷での撮影中、風が吹いてきまして、それはいい雰囲気作りをしてくれました。漫画だったら雰囲気を作るためにひとつひとつ考えて描かないといけないけど、『マザー』の撮影では、自然に風が怪しい雰囲気を作り上げてくれたわけですから。これは計算外の出来事でした。

――監督として次作は考えていらっしゃいますか?

楳図 そうですねえ、みなさんのご支援があれば可能性はあるかと (笑)。ただ2作目というのは難しいですよね。1作目が評判良かったら、比較されちゃいますから。でもまずは『マザー』をみなさんに見ていただいてから、2作目のことを考えたいですね。2作目作るとしたら、相当注意深く作らないといけませんねえ、期待ハズレにならないように(笑)。

――期待しています!

(取材・構成/斎藤香)

楳図かずお(うめず・かずお)
1936年和歌山県生まれ。1955年『森の兄妹』でプロデビュー。1966年に「少女フレンド」(講談社)に連載した『ねこ目の少女』『へび少女』で恐怖漫画の第一人者に。1967年『猫目小僧』(TVアニメ化)1975年『漂流教室』ほかの作品で小学館漫画賞を受賞。1976年『まことちゃん』が大ブレイク!“グワシ”ポーズが大流行した。ほか『おろち』『洗礼』などヒット漫画多数。音楽活動も盛んで1975年LP『闇のアルバム』2011年『闇のアルバム2』をリリースしている。現在は、腱鞘炎悪化のために漫画は休筆中。

■『マザー』
9月27日公開
新宿ピカデリーほか全国ロードショー
漫画家・楳図かずお(片岡愛之助)のもとに、彼の生い立ちを本にするために新人編集者の若草さくら(舞羽美海)が訪れます。さくらは取材をするうちに、楳図の作品の原点には亡くなった母イチエ(真行寺君枝)が深くかかわっていると思い、楳図が幼少時代を過ごした奈良県曽爾へと向かう。しかし、そこで、さくらの周りに怪現象が起こり……。
http://mother-movie.jp/

マザー (小学館文庫)

マザー (小学館文庫)

こちらはノベライズ版。

恐怖漫画界の巨匠・楳図かずお、78歳で映画監督デビュー! 母との深い関係を描いた映画『マザー』を通して創作の秘密を語るのページです。おたぽるは、漫画インタビューマンガ&ラノベの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!