『紙兎ロペ』監督と『ウサビッチ』プロデューサーが、毎日放送・竹田青滋と福岡のアニメ産業を探る!

■今後のアニメのムーブメントはどうやって作られるか?

1408_clf.jpgトークイベントの様子。

 話はテレビアニメシリーズとショートアニメの事情に発展していく。竹田さんの所属するMBSは、TBS系列の大阪局でありながら、深夜を中心とした「アニメイズム」枠にて制作には関わっていないTOKYO MXの放送作品も流すなど、アニメの放送が多い局として知られている。竹田さんは現在、日曜の17時から放送している『ハイキュー!!』を例に、深夜よりも比較的に視聴率が高い時間帯に放送されているアニメでも、近年は録画率が上回っていることを明かした。

 それから、アニメの場合はバラエティー番組などとは異なり“このキャラがダメだ”となっても編成は1クール変えられないというリスクも負っているという事情を懸念していた。つまり、バラエティー番組では座組の人選でそこそこ視聴率が望めるにもかかわらず、アニメでは普通に考えたら当たるはずの作品が当たらない、売れないものはまったく売れないという現象がある。

 竹田さんは、そうした事例を語った後、青池さんが制作する『紙兎ロペ』が衝撃的であると述べた。『SEED』や『ハガレン』といった長大なアニメシリーズは世界観を細かく決めないといけないのに対し、『紙兎ロペ』の舞台は駄菓子屋など身近にあるものなので即座に作品の内容に入り込めるという利点がある。その上で、「どうやったら作品が当たる、当たらない」という、長大なアニメシリーズのプロデューサー的な観点とは違うところで生きている村山さんや青池さんが、アニメのムーブメントを作るしかないんじゃないかと展望を語った。これを受けて、青池さんは「少額を出資した関係者が、予算を回収した後に(その作品を)どうするかを考えるようにしたほうがいいんじゃないか」と答えた。

 また竹田さんは「アニメミライ」プロジェクトの選定委員会委員を務めていることを踏まえ、『ウサビッチ』のように日本発でワールドワイドを狙えるアニメ企画はないものか、との思案を語る。村山さんの『ウサビッチ』は、グッズ関係込みでシリーズ累計売り上げは200億円に達しているそうである。そして「アニメミライ」プロジェクトは文化庁から予算が下りていることから、青池さんはカナダの国立映画制作庁(以下、NFB)を引き合いに出して話を進める。

 NFBは、特に日本の“Anime”ではなく海外の“Animation”を手本とする、制作者にとっては憧れの的になっている。青池さんもカナダ在住時に同庁へ話を聞きにいくと、“尺7分、期間18カ月(1年半)、予算1500万円”でアニメ制作の打診があったことを明かした(青池さんは個人レベルで制作するにしても限界が見えてくるとして、この件は請けていない)。NFBは同庁内に制作スタジオも所有しており、青池さんが訪問した際には、髪がボサボサの女性に「久々に人を見た」と話しかけられた、といったエピソードも。彼女は、油彩でのアニメーション制作を続けて4年目で、3分ほどの映像が完成したところだったという。こういった話からも、テレビシリーズはともかく、映画に関しては日本の制作スタイルとの違いがわかるだろう。

 最後に竹田さんは、今後のアニメの希望を担う作品としては、誰かが最初の一歩を踏み出して、ミニ枠やキャラクターを生み出し、それが作品となっていくのがいいんじゃないかと2人に問いた。村山さんは、まず福岡でどうやって制作実績を作るか、どうやって投資家とマッチングするか、が大事だと応じた。一方の青池さんは、福岡で制作すればこれだけ儲かるという見積もりができればいいのに……と希望しながら、仕事を持ってこれるプロデューサーに福岡での家を用意してあげるなどの環境整備の重要性について触れた。その上で最後に、竹田さんがプロデューサーをやってくれればと、会場を笑わせてトークイベントを締めくくっていた。
(取材・文/真狩祐志)

■クリエイティブ・ラボ・フクオカ
http://cl-fuk.jp/

『紙兎ロペ』監督と『ウサビッチ』プロデューサーが、毎日放送・竹田青滋と福岡のアニメ産業を探る!のページです。おたぽるは、イベント情報・レポアニメ話題・騒動の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!