“鼻血”描写をめぐって大炎上が続く『美味しんぼ』は、何が問題なのか?

■騒動後の対応は適切だったか?

 今回の『美味しんぼ』をめぐる問題は、騒動となってから半月あまりが過ぎた。まずは「スピリッツ」22・23合併号を読んだ(福島県民を中心とする)一般読者から火がつき、ネットを通じて急激に拡散。やがて双葉町だけでなく、福島県、さらに文部科学相までが批判の声明を出す事態になった。これに対し、原作者の雁屋哲氏および編集部、小学館から謝罪のコメントは出ていない(※5月15日現在)。

「スピリッツ」編集部は前述したように、“福島の真実”編は綿密な取材を行なって描かれ、作者の表現を尊重して掲載したと釈明。24号掲載分に関しても、その掲載意図をコメントとして公開している(http://spi-net.jp/spi20140512.html)。雁屋氏は自身のブログで「鼻血ごときで騒いでいる人は、更なる真実に発狂する」と語り、まるで挑発ともとられかねない表現で今後の展開を示唆した。実際、24号掲載話では雁屋氏の予告した通り「福島には人が住めない」とショッキングな結論が出されている。最終ページでは作中のキャラ・海原雄山の口から「これが福島の真実なのだ」と発せられているが、今なお被災地に住み続ける人たちからすれば、到底納得しがたい話かもしれない。

 ちなみに雁屋哲氏と小学館は、いつも読者からの批判・指摘をはねのけているわけではない。かつて『美味しんぼ』作中で“はちみつと半熟卵を離乳食として与える”描写があったが、これらの食材は乳幼児にとって健康を害する危険性があるとの指摘を受け、謝罪文を掲載している。このエピソードは現在も単行本に収録されず欠番扱いだ。また小学館は、同社のマンガ誌「週刊ヤングサンデー」に掲載された『マイナス』(作:沖さやか)の人肉食シーンが問題となった時は、回収措置を取っている。どちらも健康被害や非倫理的描写の影響が生じる前に、小学館は迅速な対応をしていたのだ。

 しかし今回の“福島の真実”編に関しては、謝罪や回収といった措置を行う気配は見られない。ある意味、こうした“小学館らしくない対応”も批判を強めている一因といえるだろう。



 今回の炎上騒動を持って、雁屋哲氏の意見が間違っていると断定はできないし、その主張を表現することを咎めるつもりはない。だが、その表現方法として、これまで見てきたような“偏った取材”“煽情的な構成”“フィクションとノンフィクションの境界線”“騒動後の対応”に疑問が残ることも確かだ。こうした点が読者からも大きな批判を浴びる原因となってしまったのではないだろうか? これまで寄せられた数々の批判と原作者の態度をふまえ、5月19日発売の「スピリッツ」25号ではどんな公式コメントが述べられるのか。そこに謝罪の言葉は盛り込まれるのか? “作者(原作者)・編集部・小学館”どのレベルからの見解になるかも含め、注目していきたいところだ。
(文/浜田六郎)

美味しんぼ 110 (ビッグコミックス)

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”真実”なんて人の数だけあるんですよ。というか、食の話は…?

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