“鼻血”描写をめぐって大炎上が続く『美味しんぼ』は、何が問題なのか?

1405_sprits.jpg『美味しんぼ』の掲載誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」14年24号(小学館)。騒動はいまだ沈静化する気配を見せない。

 単行本110巻に到達した人気のグルメマンガ『美味しんぼ』。「週刊ビッグコミックスピリッツ」(共に小学館)誌上で連載中の本作だが、最新シリーズ“福島の真実”編の描写をめぐって「福島に対する風評被害を助長する」「悪質な印象操作だ」と、ネット上での炎上を始めとした騒動が続いている。

 すでにご存じの方も多いと思うが、問題になったのは事故後の福島第一原発を取材した山岡(本作の主人公)たちが、揃いも揃って鼻血を出すようになったという描写。続いて、同席する双葉町の前町長・井戸川克隆氏(実在の人物)が「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」と発言した。このシーンをめぐってSNS・ブログで「福島県民として抗議の意を示したい」「全くあり得ないウソを掲載している」と批判が殺到。直後にスピリッツ編集部が公式サイトでコメントを発表したが、その文言は「綿密な取材に基づき」「作者の表現を尊重して掲載」など釈明にとどまり、謝罪の言葉が見られないことから火に油を注ぐ結果になった。

 さらに編集部は公式ツイッターで「5月19日発売の25号と小誌公式HPにて、識者の方々のご見解やご批判を含むご意見を集約した特集記事を掲載する予定です」と発言するも、ネット上では「炎上商法か」「記事はいいから廃刊しろ」などと散々な評価。いきすぎた編集部や作品バッシングをたしなめる発言も散見されるが、現状はほぼ袋叩きに近い状態だ。

 作品そのものに対する是非は読者に判断いただくとして、本記事では“なぜ今回の『美味しんぼ』はこれほど叩かれることになったのか?”を考えてみたい。

■取材のソースに偏りはなかったか?

「スピリッツ」22・23合併号に掲載された第604話「福島の真実-22」に登場する井戸川克隆氏、松井英介氏は、共に反原発の立場を明確にしている人物だ。井戸川氏は街頭演説で「震災が起きることは事前に分かっていたが政府と電力会社が隠蔽した」という旨の発言をしている(https://www.youtube.com/watch?v=kNGH17igez8)。また、松井氏は岐阜環境医学研究所所長を務め、著書に『見えない恐怖 放射線内部被曝』がある。この両氏が重要なキャラクターとして扱われる反面、福島第一原発所長の高橋毅氏はわずか1コマ登場したのみで発言数もゼロ。

 もちろん今後の展開によっては原発推進派のキャラクターにスポットが当たる可能性もあるが、現時点では“原作者が自説を補強するために、取材の時点で恣意的な人選が過ぎるのでは?”という疑念を抱く読者も多いことだろう。

 事実、同誌24号掲載の「福島の真実-23」では、井戸川氏が町議会で不信任決議を受けて辞任するまでのいきさつを述べているが、これに対する双葉町側の言い分は作中で描写されていない。それどころか、この“福島の真実”編に関して、双葉町は公式サイト上で「事前の取材が全くなく、一方的な見解のみを掲載した」と小学館への抗議文を載せ、取材そのものがなかったことが明らかになった (http://www.town.fukushima-futaba.lg.jp/item/5924.htm)。また同話では、「福島に住んではいけない」と主張する人物として、福島大学行政政策学類准教授の荒木田岳氏(実在の人物)も登場している。原作者とスピリッツ編集部は“2年にわたった綿密な取材”と説明しているが、その実、当事者の見解の裏取り取材があまりにも偏向しているといえないだろうか?

美味しんぼ 110 (ビッグコミックス)

美味しんぼ 110 (ビッグコミックス)

”真実”なんて人の数だけあるんですよ。というか、食の話は…?

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