ブレないっぷりという点でいえば、これまた魅せたのがエロ劇画系ブロガー・劇画狼。サイト「なめくじ長屋奇考録」の管理人で、エロ劇画のひどいシーンばかりを集めて年末に発表する「このマンガがひどい!」といった企画で知られる彼も、2012年度版以降の『このマン』選者の常連だ。
エロ劇画系の立役者だけあって、毎年褒めてるんだか馬鹿にしてるんだかわからないコメントとともに、ニッチな作品を拾い上げているが、今年は第1位に櫻井稔文の『絶望の犯島 100人のブリーフ男vs1人の改造ギャル』(双葉社)を挙げている。
この作品、ヤリチン男がヤクザの女に手を出してしまい、制裁としてギャルにされ、飢えた性犯罪者ばかりがいる島に送り込まれるという、異色サバイバルマンガ。ニッチではあるが、エッセイスト・犬山紙子も1位に挙げるなど、確実に一定のファン層をつかみ、ランキングでもオトコ編27位に入っている。
ただ、劇画狼が魅せるのは、今年単体のラインナップではない。実は『このマン』初参加の2012年度版ですでに、櫻井の別名義(というか、どちらかといえば櫻井稔文が別名義なのだが)である桜壱バーゲンの『バカ潜入!』(ミリオン出版)を2位に挙げているのだ。年度またぎでの猛プッシュ。ブレなさを見せつけた選者のひとりといえるだろう。
ポジションとカラーといった点でいえば、なかなか面白かったのが「雑誌編集部が選ぶこのマンガがすごい!」のコーナー。昨年までは「サイゾー」(小社刊)も入っていたのだが、今年はお声がかかっていないらしく、新たに雑誌「BUBKA」(白夜書房)編集部が登場している。
すぐ近くで「an・an」(マガジンハウス)が『かくかくしかじか』(集英社)や『大奥』(白泉社)、「FRaU」(講談社)が『失恋ショコラティエ』や『姉の結婚』(共に小学館)を挙げるなど、おしゃれなラインナップが並ぶなか、「BUBKA」は1位『めしばな刑事タチバナ』(徳間書店)、2位『闘飯』(双葉社)とB級グルメ系の雄を選出。続くラインナップもB級臭が魅力の作品揃いで、さすが「BUBKA」と思わせるポジションを築いている。このあたりは、感心するとともに、この雑誌は絶対、白夜書房のある高田馬場から出られないな、と思わせてくれた。素晴らしい。
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