マンネリ化するランキングに風穴を開けられるか? 書店員有志が選んだ『売りマン』がすごい

1312_uriman.jpg『売りマン 2013』公式HPより。

 毎年恒例の『このマンガがすごい!2014』(宝島社)が9日に発売されるなど、今年もマンガの年間アワードの時期がやってきた。マンガのアワード企画は『このマンガがすごい!』を皮切りに、カルチャー誌「フリースタイル」の『このマンガを読め!』、書店員を中心とした有志が選ぶ『マンガ大賞』、マンガ編集者を選者にした『コミックナタリー大賞』など、さまざまなものが生まれ、マンガ市場を盛り上げている。

 ただ、一方で投票によるランキング企画がジレンマを抱えているのも事実だ。ランキングである以上、ある程度の人数が参加しなければ説得力を持てないが、多くの人が参加すればするほど、結果的に“多くの人が知っている作品”に票が集まることとなり、ランキング上位にはすでにある程度売れている作品が並ぶことになりがちだからだ。そのため、熱心なマンガ好きからは「有名作品・ヒット作ばかりで既視感が強い」という不満が、例年噴出している。

 ランキング企画はそうしたコアなマンガ好きではなく、大量にマンガを読むわけではない層をターゲットにしているという側面もあるので、ランキング企画に価値がないというわけではないだろう。また、“お祭り”的にランキングを楽しむ読者も少なくない。だが、ヒット作を表彰する傾向が強い現状では、ランキングによって知られざる作品をヒットに導く力は強くない。

 こうした現状を受け、今年11月、従来とは別の切り口のマンガ年間総括企画が誕生している。書店員有志による『売りマン』だ。

 この企画は、ランキングではなく、書店員が作品を推挙し、紹介するという形を取っており、今年は43作品が挙げられているのだが、面白いのはその切り口だ。

 単に書店員が面白いと感じた作品を挙げるのではなく、実際に店頭で仕掛け、自店舗での売り上げを伸ばした作品を挙げるという形を取っているのだ。

 特に面白いのが選評。「どんな読者をターゲットにして展開したか」「どの作品と並べて置いたか」といったところを解説しながら紹介しているのが興味深いところだが、「○○と並べて売りたいが長いこと品切れで無理」など、現場の事情が垣間見られる部分も。現場ならではの視点と熱量が詰まった内容は、既存のアワードでは触れられない凄みがある。

 一見、書店向けの企画という切り口ではあるが、並べられたタイトルを見ると、アワードにも顔を出しそうな作品もある一方で、あまり知られていない作品や「これを売ったのか!」と思わせる作品が多数を占めている。いわゆるコアなマンガ好きの層にも新鮮みのあるラインナップといえるだろう。

 まだまだ誕生したばかりで知名度は低いが、「ヒット作ばかりでマンネリ」という声のある既存アワードとは違った切り口で、新たなヒット作を生む場所になる可能性を感じる『売りマン』。マンガ好きなら目を通しておきたい、この年末の隠れた注目企画だ。
(文/ネルヤ編集部)

■『売りマン 2013』
http://mankiki.comitans.info/

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