“王者”任天堂、なぜ苦境に?深刻化するソフト不足、開発会社離れ…対応策に懸念の声も

 また、あるゲーム評論家は「今年のE3の任天堂ブースの不人気具合を見ると、Wii Uは今年の年末商戦でも苦戦するのは間違いない。見るべきゲームソフトがいまだに揃っていないから」と、次のように説明している。

「Wii U向けソフト不足はかなり深刻。E3で同社は自社開発ソフトとして12点発表したが、7月発売予定の『ピクミン3』をはじめ、年末までに発売日が決まっているのは『スーパーマリオ3Dワールド』やミニゲーム集『WiiパーティU』など10点にとどまっている。これで年末商戦を盛り上げるのは至難の業だろう」

 さらに状況を厳しくしているのが、Wii U向けサードパーティ開発ソフトの少なさ。
E3で同社はこれを13点発表したが、海外主要ゲームメーカーで積極的なのは、ダンスゲーム「ジャストダンス2014」、歴史アクションゲーム「アサシン クリード」など4点を発表した仏ユービーアイソフトだけ。米大手ゲームメーカーのアクティビジョンブリザードは、子供向けアクションゲームを1点発表しただけ。同社が昨年発売した戦争シューティングゲーム「コール オブ デューティ」シリーズは、全体で2200万本以上を売り上げたヒット作だったが、Wii U版の販売はわずか20万本だった。

 こうした背景には、「Wii U版を制作するためには、てんこ盛りのスペックに対応してスタンダード版に色々な機能を追加する必要があるため、費用対効果が悪すぎる」(ゲーム評論家)という要因があるようだ。

 さらに、任天堂ファンを自認し、「Wii Uを支える」とまでメディアに語っていた米エレクトロニック・アーツに至っては、今回はWii U向けソフトに関する発表さえしなかった。同社も昨年発売したサッカーゲーム「FIFA13 ワールドクラスサッカー」は全体で1000万本以上を売り上げたヒット作だったが、「Wii U版の販売本数は10万本程度にとどまり、Wii Uを見限ったようだ」(同)。

●鈍い国内ゲームメーカーの動き

 国内に目を転じても、ゲームメーカーのWii U向けソフト開発の動きは鈍い。

 ゲームメーカーは、開発したソフトをさまざまなゲーム機用にアレンジして収益性を高める「マルチプラットホーム商法」が基本。したがってWii U版も発売するのが常識。だが、こちらでも「Wii Uのてんこ盛りスペックに対応してスタンダード版に色々な機能を追加する必要」があるので、ことWii Uに関しては業界の常識が通用しないようだ。

 こうした内外のサードパーティの任天堂離れが、Wii U向けソフト不足を招き、ソフト不足がWii Uの販売を抑え込む悪循環に陥っている図式だ。

 Wii U向けソフト不足の深刻さは、さすがの任天堂も認識しているようで、同社は今月から慌てて開発ツールの無償配布を始めた。これまではソフトの品質保証の観点から、同社の取引基準をクリアしたゲームメーカーにのみ有償配布していたのを無償に切り替えたのみならず、フリーのプログラマーでも同社に登録すれば国内外を問わず無償で配布する仕組みに変えた。

 だが、前出と別の業界関係者からは「実績のわからないフリープログラマーにまで門戸を開放したのは泥縄そのもの。その品質を審査する社内態勢も整っておらず、玉石混交で販売現場は混乱するだけ。それ以前に、ソフト開発費の高さの解決策を何も提示していない。これでソフト不足解消は、とても無理」と指摘している。

●オンラインゲームの逆襲

 任天堂が家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」(ファミコン)を発売して今年で30年。ゲーム機の雄として業界に君臨、「家庭用ゲーム機=ファミコン」のブランド力で、圧倒的な競争優位を保ち続けた名製品が、インターネットの普及でスマホやタブレットで遊ぶソーシャルゲームに市場から追われ、任天堂は右往左往している。

 新興ゲームメーカー「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」が開発したスマホ向けゲーム「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」はダウンロード数がサービス開始から1年4カ月余りで累計1600万件を突破。ガンホーの時価総額は一時任天堂を上回った。

 ゲーム専門誌・書籍出版のエンターブレインによると、12年のオンラインゲーム国内市場規模は4943億円で、過去9年間で10倍に成長、家庭用ゲーム機の市場規模4834億円を追い抜いた。

 Wii Uの不振は、たそがれる家庭用ゲーム機市場の象徴といえる。ゲーム業界担当の証券アナリストは「企業寿命30年説に照らせば、ファミコンはまさに寿命が尽きようとしている商材。もはやオンラインゲームを逆襲できる材料はどこにも見当たらない」と断言する。

 曲がり角を迎えた任天堂の、今後の動向に注目が集まっている。
(文=福井 晋/フリーライター 2013.02.10Business Journal既出)

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