東京オリンピック・パラリンピックがコミケの列整理を参考にしようとする無謀さ　コミケですら走るヤツはいるのに……

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　NHKなどで報じられた、東京オリンピック・パラリンピックでの来場者対策をめぐる組織委員会の構想が失笑されている。15万人程度とされる来場者をさばく方法として、組織委員会は次のようにコメントしたのだ。

「コミックマーケットとオリンピックは、客の層や来場する時間帯などで異なる点はあるが、駅からの動線計画や行列の作り方、さらに行列が横断歩道を渡るときに何秒くらい時間がかかるか、などは視察して参考にしている」

　これに対して組織委員会の対応の甘さを指摘しているのが、当のコミックマーケット参加者である。

　いうまでもなくコミックマーケットという場所は全員が参加者であり、客ではないという理念を前提とした場所。そうした意識を持つ参加者が多いからこそ、スムーズに運営をされているのだ。

　きれい事をとっぱらっていえば、多くの参加者はこの場がなくなってしまったら自分の欲しい薄い本やグッズが手に入らなくなってしまう。そんな切実さと恐怖感が「ちゃんとスタッフのいうことを聞いて、スムーズな運営に協力しなくては」という意識を生み出しているのだ。みんな高いチケット代を払って客の意識で来るであろう東京オリンピックとは、この時点から違う。

　さらに、コミケも決して理念が共有された平穏な場所ではない。つい十数年前までは待機列が完全にスムーズとはいかず乱れることもあった。現在、入場は比較的スムーズになったものの「走らないでー」というスタッフの声を無視してダッシュする人も当たり前に見かける。中には、なぜか飛び跳ねている人とかムーンウォークをしているヤツも……。まあ、まだ理念を共有している人が多いから、ギリギリのところで事故が起こらずに済んでいるだけといえる。

　きっと、炎天下で「一生に一度」「高いカネを払って」というオリンピック客はそうはいかないだろう。組織委員会がコミケで学んだのは「こんなやり方は無理」ということだといいのだけれども。
（文＝大居 候）