薔薇族だった時代 ~87歳の社会見学 第49回

薔薇族だった時代 ~87歳の社会見学の画像1撮影:津田広樹

 初代薔薇族編集長である伊藤文學氏の祖父・伊藤冨士雄氏は、大正時代にキリスト教の救世軍将校で廃娼運動の闘士として活躍し、千人近いお女郎さんを救い出された。

 吉原遊郭に身売りされた娘を救い出されてしまったら、遊郭の主人は大損する。そのため、その筋の男達を雇い、救いに来た人間に暴力を振るう。伊藤冨士夫氏も怪我をして病院に搬送されたそうだ。

 文學氏は「父は女道楽の仕放題だったが、僕は祖父の血を受け継いでお金で女性を買った事がないから吉原に行ったことがない」とご自身の書籍にも書かれていた。私がなかなか仕事を得られないことを心配して下さった文學氏が「パーティで会った吉原のソープ社長なら女性撮影仕事をくれるかもしれないよ、僕も元気で歩けるうちに吉原の内部を見学してみたいな」と仰ってくれた。87才の文學氏は昔と変わらず行動派で、ソープ社長に「絵画をプレゼントするから」ということで、一緒に行こうということになり、大人の社会科見学が令和元年8月30日に決行された。

 87才の文學氏と渋谷モヤイ像前で待ち合わせしたのだが、バスから降りてこられた文學氏が、右手に杖をつかれ左手で風呂敷で包まれた絵画を抱えてらしたのに驚き、慌てて絵画を受け取り一緒に山手線で乗車した。

 鴬谷で下車し、タクシーで吉原のソープに到着した。社長がバックヤードを案内してくれた。文學氏はソープの内部を見学できて感動なさり、ご自身のブログにも原稿を書いてらした。その原稿のタイトルが「昨日の敵は今日の友」だ。

 なんて素晴らしい言葉だろう。私は、常々「人間は、相手を許せる気質の人間と永遠に相手を許せない気質の人間の二通りで、後者は何も得られないから損だ」と親しい人間に熱弁するのだが、正に「昨日の敵は今日の友」が、その全てだ。

 文學氏の人として素晴らしいこのお考えと行動力で、87才にしてソープランドの内部を合法的に見学できたのだから、文學氏の得たものは大きい。私は感動なさる文學氏を目の当たりにできたので、私の仕事にはまだつながっていないものの、大人の社会科見学は実に有意義なものだった。画像は、ソープランドのバックヤード見学中の文學氏後ろ姿だ。

 その伊藤文學さんが、薔薇族編集長時代に私が、薔薇族カラーグラビアを任されていた時に全身全霊で撮り続けた他に類をみないスポーツマン画像を「津田広樹写真集・限定電子版」にしてシリーズ化している。珠玉の作品ばかりなので、下記の 津田・・・から始まるTwitterアカウントをクリックしてぜひとも見ていただきたい。

【津田広樹プロフィール】
 いわゆる80年代アイドル全盛の時代にスチール撮影のみならず、その多才さを認められてグッズ等の企画発案にまでもマルチな才能を発揮したキャリアをもちながら、あらたなる新天地として当時の有力ゲイ雑誌であった薔薇族の出版会社に編集部員として転身。その後もさらにその非凡なる才能の昇華は衰えを知らず、グラビアや企画ページ等にも幅ひろく手腕をふるい、多くの絶賛を得るまでにおよぶ。そして1996年にはゲイ業界初の試みであった3D写真集付き映像ビデオ、ジャック・リードを発売し世に送り出した。
 さらにオリジナル競パン付きDVDの発売など革新を起こし続けるも、無断配信に苛まれ、昨年に全ての映像ソフトのレーベルを手離す。しかし長年ににわたり不変的な価値観を持ち続ける津田広樹の世界観は色褪せることのなく、その真価を現在も世に問い続けている。

津田広樹Twitter
@Wi08XKZE10Vb5rx

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