一人行動どこまで平気? 結婚できない男が見る、ドラマ『まだ結婚できない男』第1話

■わかり合うことの難しさ

 今回も、桑野が一人でさまざまなことを楽しんでいるシーンが出てくる。

 ある時、英治が仕事仲間と食事をしていると、桑野が一人でしゃぶしゃぶを食べていた。「一人しゃぶしゃぶ」に驚く若手たちだったが、英治は「慣れるから」と驚く様子もない。

 実は私も一人でしゃぶしゃぶを食べに行くことはあるが、好きなものを好きなペースで食べられて、なかなかいいものだ。

 昔、職場の若い女性にその話をしたら、たいそう驚かれてしまった。「一人でしゃぶしゃぶなんか食べて平気なのか?」と聞いてきたので、「では、一人でしゃぶしゃぶ食べたくなったらどうするのか?」と逆に聞いた。彼女の答えは、「一人でしゃぶしゃぶを食べたくなることなんかない」というものだった。もはや見解の相違どころではない。そもそも湧いてくる欲求が異なっているのだから、理解し合えるとは思えなかった。

 そんなある日、桑野は離婚裁判を行っている有希江の夫(二階堂智)が、愛人とマンションに入っていくところを目撃する。そのことをさり気なく吉山に報告しようとした桑野だったが、逆に怪しまれてしまう。ちょうど住宅関連のシンポジウムで講演をしなければならなかった桑野を送るため、吉山と有希江は、ホテルまで一緒に行く。そこで二人は桑野の思いの一端に触れるのだ。

 シンポジウムの壇上に立った桑野は話す。「人生が長くなれば、不安もあるが、希望もある。人生には必ずセカンドステージが来る。結婚してもしなくても、セカンドステージが幸せかどうかには関係ない」。

そうなのだ。とかく結婚・出産といった事象は、「将来の安心のため」という切り口で語られることが多い。でもそれは、単に「自分が安心と思い込んでいる」に過ぎない。もちろん、将来を考えて結婚する人を否定などしない。ただ、だからといって結婚しない人を不幸と決めつけるような論調は、いたずらに不安を煽っているだけのように思えてしまう。桑野の言葉ひとつひとつにうなずかされる。

 とにかく、前作から引き続いての出演者や小ネタが多く、懐かしくなったり笑わされたりすることしきりであった。そしてこちらも前作同様、面白さの中に、桑野の人生観や、今の日本の抱える問題のようなものが隠されている。そんなものに触れながら、笑ったり感動したりするのが、このドラマの楽しみ方であると思う。

 一人でいることは恥ずかしい。そんなふうに思ってしまうのは、まだまだ結婚するのが普通だという感覚が世の中にあるからだろう。「少子化担当大臣」が置かれるほどの国であるから、結婚して子供を生むことが大切なのはよくわかる。だが、一人で生きることになった人も胸を張っていられる、そんな時代が本当の理想なのではないだろうか。そして、このドラマを通して、多くの人が結婚と一人で生きることについて考えを巡らせれば、多様な生き方が見えてくることと思う。

(文=プレヤード)

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