『青のオーケストラ』ボーイミーツガールの青春群像劇!新たなクラシック漫画の傑作誕生の予感!!

 ここ数年、クラシックを中心にした音楽コンテンツが流行っている。例えば社会現象化した『のだめカンタービレ』や、原作漫画とアニメを同時に終わらせるという手法で話題になった『四月は君の嘘』、ユーフォニアムという一般的にはあまり知られていなかった楽器を一躍人気楽器にした『響け!ユーフォニアム』(原題『『響け! ユーフォニアム 北宇治高校 吹奏楽部へようこそ』)などだ。2018年4月には『ピアノの森』がアニメ化さ予定であり、この流れはまだまだ続きそうだ。

 そして、ここに新たな音楽コンテンツが誕生した。阿久井真の『青のオーケストラ』だ。阿久井真は、2010年の第66回新人コミック大賞で佳作入選後、小学館のウェブコミックサイト・裏サンデーを主戦場に活躍していた漫画家だ。人間の姿をした鳥と人間の男の子の交流を描く『猛禽ちゃん』や、劇場版アニメ作品として大ヒットを飛ばした『心が叫びたがってるんだ。』のコミカライズを手掛けている。今作『青のオーケストラ』で4作目となる。

 『青のオーケストラ』の主人公・青野一の楽器は、第1巻の表紙にある通り、バイオリンだ。学園青春モノでバイオリンと聞くと、『四月は君の嘘』を思い出す人が多いと思うが、それはまちがいではない。恐らくだが、『青のオーケストラ』も多分に影響を受けていると思われる。

 まずは第1巻の公式説明文を引用しよう。

 青春の、曲が始まる。

 とある理由でバイオリンを弾くのを辞めた元・天才少年、青野 一。

 中学3年の秋、ひとりの少女と高校のオーケストラ部と出会い、止まっていた彼の時間が動き出す――

 音と音、心と心が繋がっていくアンサンブル青春ドラマ、開幕。


 ここでの注目は「とある理由でバイオリンを弾くのを辞めた元・天才少年」という部分。『四月は君の嘘』の主人公・有馬公生そのものである。そして、「ひとりの少女と高校のオーケストラ部と出会い、止まっていた彼の時間が動き出す」だが、これは『四月は君の嘘』でいうところの宮園かをりだ。『青のオーケストラ』の主人公・青野一は、有馬公生と楽器が異なり、楽器を中断した理由も異なれど、ほぼ同じ状況に置かれている環境から物語は始まるのだ。

 一方、『四月は君の嘘』の宮園かをりに当たるのは、『青のオーケストラ』でいう秋音律子だ。ふたりとも同じバイオリニストだが、決定的に異なるのは前者は自由奔放ながら天才肌のバイオリニストであり、後者はまるっきりの初心者ということ。性格については、ふたりともツンデレであり、自由奔放であり、素直でだいたい一緒だ。

 『四月は君の嘘』を読んだことある方ならば、1ページ目を読んだ瞬間から、乱暴に言ったら『青のオーケストラ』の表紙を見ただけで、『四月は君の嘘』を彷彿するだろう。

 実際のところ内容はどうなのだろうか。

 第1巻は、主人公・青野一がヒロイン・秋音律子との出会うことで、再びバイオリンを弾く楽しさと快感を取り戻し、ふたりで切磋琢磨しながら、ときには師弟関係であり、友人であり、ライバルでありながら(実力差はありすぎるが)、オーケストラ部の強豪校である海幕高校へ入学するまでを描いている。

 第2巻は、オーケストラ部に無事入部したふたりに待ち受ける強豪校ならではの、人間関係の困難さ、新しい友情、新しいライバルとの関係、そしてほのかな恋を描いている。

 第1巻こそ『四月は君の嘘』の影響を多少感じることがあったが、それはほぼ設定が近しいための錯覚であったかもしれない。もちろん両作とも完全なる「ボーイ・ミーツ・ガール」の学園青春ものであるが、『四月は君の嘘』は中学生を描いている、そしてソリスト同士の物語ということもあり、世界観が比較的狭かった。しかし、『青のオーケストラ』は対集団であり、群像劇である。青野一と秋野律子、それぞれの環境と周囲との関係性が集約することで、物語が動いていく。

 中学生では描きにくかったことも、高校生だからこそ描かなければいけないことも、これから『青のオーケストラ』には出てくるはずだ。例えば恋愛。中学生では描けなかったことも多いが、高校生であればなんとかなる表現も出てくることだろう。小桜ハルの淡い恋心はどうなるのか、そこに秋音律子はどう絡んでいくのか、それとも新しい恋のライバルが出現するのか。

 部活という親密でありながらも、弱肉強食であり、完全なる実力主義の中で、どうキャラクターたちが挫折し、成功し、人間的に成長していくのか。そして、それが部活という枠を越え、日本中のまだ見ぬバイオリニストがどう彼らに絡んでくるのか。 『四月は君の嘘』はある意味、宮園かをりの死へ突き進む、閉じた物語であった。しかし『青のオーケストラ』は狭い場所から、大海原へ開かれた物語なのだ。

 第2巻の終わりでは第一の壁・部内オーディションが開かれるところで終わる。

 今後、キャラクターたちが出す音が漫画を通してどう変わっていくのか、非常に楽しみな作品である。
(文=Leoneko)

青のオーケストラ 1

青のオーケストラ 1

まずは1巻からどうぞ!楽器やりたくなるよ!!

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