高田桂『あねコン』義姉との禁断の愛……かと思いきや、観光PRマンガだった 

 高田桂『あねコン』(KADOKAWA)は、オビが挑発的な作品である。作品の概要を短い言葉で煽ったり、店頭で読者の手に取らせるためのオビ。そこで本作は「大好きだった義姉が未亡人になり結婚のチャンスが到来!」と、近親相姦要素込みの禁断の愛が描かれているのだろうなと感じさせる言葉を記している。

 問題は、その横。さまざま、著名人などが推薦を寄せる一言を載せるべき部分に「那須町観光大使きゅーぴーも応援」という言葉がキャラと共に刻まれているのだ。

 まさかの、地域のゆるキャラが禁断の愛を応援するという仕様。いったい、どうなっているんだと買わずにはいられないではないか。禁断の愛を応援しちゃって、あとから妙な団体が因縁をつけてくるんじゃないかとドキドキである。

 さて、一読してよ~く理解できた。

 この作品。義姉との禁断の愛かと思ったら、そんなことはなくリアルな那須町の観光PRマンガだったのである。

 物語の主人公・柊二は、幼なじみの芳乃をずっと思い続けていた。しかし、芳乃は実家の旅館を継いだ柊二の兄と結婚してしまい、その思いは潰えたかに見えた。ところが、兄は病気で若くして世を去ってしまったのである。

 それから1年。実家の温泉旅館・みうら屋に戻った柊二は、母親から芳乃と結婚し、跡を継ぐことを提案される。当然うれしいはずなのに、戸惑う柊二。そればかりか、柊二は芳乃が、取り憑かれている九尾の狐に姿を変えるところを目撃してしまう……。

 どうだろう。物語は単に禁断の愛を描くだけではない。憧れの年上の女性である芳乃が九尾の狐に姿を変えるとき、一人称が「わし」のケモノ耳の美女と姿を変えるのだ。

 つまり、ケモナーも喜ぶ要素も入っているという、一読で何度美味しいかわからない物語なのである。

 そんな伝奇要素を含めつつ、物語は今はひなびた温泉街になった那須の姿を存分に取り入れながら展開していく。この押しつけがましくなく、物語の舞台をきちんと描いていくのもまた上手いのだ。

 なるほど、作品がヒットすれば那須が聖地巡礼のスポットになるのは間違いない。これなら、ご当地のゆるキャラが協力してくれるのも当たり前だろう。

 なんだか、捕らぬタヌキなんとやらという言葉が浮かんでくるような作品ですが、それを作者も意識しているのか。狐だけでなくタヌキも本作の重要な要素として登場する。というのも、この世に未練を残した柊二の兄は、タヌキの置物の中にいまだ魂を残しており、柊二に話しかけてくるのである。

 いやいや、これを知ってしまったら、余計に義姉との結婚を承諾することなんてできないのはないか。なんだか、混迷の深まりそうな物語だが、いったいどういう形で解決するのだろう。そして、この作品が観光PRに役立つのが、見ものである。
(文=是枝了以)

あねコン 1<あねコン> (コミックフラッパー)

あねコン 1<あねコン> (コミックフラッパー)

聖地巡礼として“殺生石”を観にいってみては

高田桂『あねコン』義姉との禁断の愛……かと思いきや、観光PRマンガだった のページです。おたぽるは、漫画マンガ&ラノベ作品レビューの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!