みんなはどこで感動した?『コミックマーケット40周年史』

20150821_comike.jpg『コミックマーケット』公式サイトより。

 一部の人たちにとっては待ち遠しかった資料集が発刊された。「コミックマーケット88」で初売りされた『コミックマーケット40周年史』(有限会社コミケット)が、それだ。

 当初、春のコミケットSPで発行予定だったこの資料集は、収録内容の更なる強化のために直前になってコミケ88での発売に変更。そのため一部の参加者からは、どんな資料集になるのか話題を集めていた。

 そんな注目度ゆえか、初日には搬入分がまさかの完売になり、急遽追加搬入をする事態に。一部のスタッフからは「売れ残るんじゃないの?」と、参加者の多くは興味を持たないのではという不安の声もあっただけに、嬉しい悲鳴となった。

 この資料集は1985年に発行された『コミケット・グラフィティ―マンガ・アニメ同人誌の10年』(朝日出版社)、2005年に発行された『コミックマーケット30’sファイル──1975-2005』(有限会社コミケット)のうち、特に後者を継ぐ形で過去10年間の資料を中心に掲載されている。

 この10年間でさまざまなことがあったのだろう。『コミックマーケット30’sファイル──1975-2005』では記されなかったことが明らかにされている。例えば、明石良信氏(コミックマーケット副代表)は、かつて起きた「クーデター事件」について触れた記事で、コミケから分裂していったコミックスクエアについて

「現在ではインタビュー等で話し合う中で和解し「スクエア」のスタッフ達とも酒を飲んで談笑し合う中になっている。」

 と記している。また、明石氏は初代代表の原田央男氏が代表を辞任し、米澤嘉博氏に交代したことに言及する記事で「C12でそれまで代表だった原田氏が“(当時の)同人誌=コミケットへの絶望”を理由に代表を辞め」とも記している。

 これまでコミケの歴史の中でも、あまり言及されることの少なかった部分が、公式の記録として掲載されているのである。

 もちろん、これは僅かな部分に過ぎず収録内容は多彩だ。男性向け・女性向けジャンルのサークル参加者、企業ブース出展者による座談会。さらには、米澤前代表の逝去と共同代表の就任への過程を記した記事。コミケットの理念の変容を記したページまで、誰もが自身のコミケでの体験とシンクロさせながら、改めて「コミックマーケットが存在してよかった!」と思える内容になっている。

 単なるデータベースとしてだけではなく、コミケを知らない人に自信を持って、コミケとはどういった場であるのかを説明するのに役立つであろう貴重な資料集。データは過去10年分を主体としており、それより前は『コミックマーケット30’sファイル──1975‐2005』を読まなければ詳細を把握できない。こちらも、ほぼすべての記事を公式サイトにてPDFファイルとして、なるべく早い時期に無料公開する予定とのことなので、あわせて読んでほしい。

 ここ10年の間に、新たにコミケに参加するようになった人々に、もっとコミックマーケット40年の感動を味わって欲しいのでR!
(文=昼間たかし)

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