ラジオドラマ化も話題に! どこかネジの外れた“電波系”キャラクターたちが織りなすドラマ『波よ聞いてくれ』

150601_namiyokitekure.jpg波よ聞いてくれ』第1巻(著:沙村広明/講談社)

 先日、J-WAVEでラジオドラマ化されたことも話題となった、「アフタヌーン」連載中のマンガ『波よ聞いてくれ』(共に講談社)。

 物語は札幌を舞台に、ヒロイン・鼓田ミナレが居酒屋で知り合った地元ラジオ局のディレクター・麻藤に愚痴った失恋話をラジオで放送されたことから始まる。これをきっかけに、ミナレは深夜番組を持たされ、ラジオ業界へと足を踏み入れていくこととなる……。

 本筋のストーリーよりも魅力的なのは、ミナレをはじめ、社会の常識とは何かがズレている登場人物たちだ。

 沙村の代表作といえば、多くの人が『無限の住人』(講談社)を挙げるだろう。しかし、沙村作品の本質的な魅力は、絶妙なエロスと常識から外れたギャグともシリアスとも分別し得ないキャラ造形にある。

 しかも、そのどちらも一種狂気の域に達しているのが沙村の才能といえる。特にエロスを扱う作品での狂気には容赦がない。責め絵を収録した『人でなしの恋』(一水社)にせよ、ロリ輪姦とか無茶過ぎる描写が繰り広げられる『ブラッドハーレーの馬車』(太田出版)など――読んだ読者が寝込むほどの衝撃を与えてきた。エロスでそこまでやれるわけなので、沙村のもう一つの魅力、どこかネジの外れた人物造形も容赦がない。

 今回のヒロイン・ミナレも、人としてどうかと思うキャラだ。

 冒頭、居酒屋で酔いつぶれたミナレは、バイト先のカレー屋に今月2回目の遅刻。今月3回遅刻したらクビなのだが、今日はまだ6月4日だ。怒りに震える店長に対し、ミナレは言う。

「失恋中はノーカンにしてください」

 いよいよクビが現実的となれば、店長に土下座もいとわない。ただし、床ではなく、テーブルの上でだが……。

 店長も店長で、店は「パンとカレーの夢空間」とか言っているクセに、店内のBGMは流しっ放しのラジオ。そこはかとなくイタい店だ。

 物語の途中、住むところを失ったミナレは、ラジオ局のAD・南波のマンションに転がり込む。しかし、この娘もまたヤバい。

 いつまでも寝ているミナレのために食事まで用意してくれる、なんとも女子力高い娘・南波。そんな彼女だが、ペットの亀への餌やりをミナレが安請け合いすると、丸々ノート1ページを使って詳細な説明メモを用意……このメモ、読者はちゃんと読んだのだろうか?

 公式の宣伝文では「サッポロ電波系(!)恋唄」という一文があったが、電波を発信しているのはラジオ局ではなく、登場人物たちのほうではないだろうか。

 やはり沙村の持ち味は、現実世界に存在したらめんどくさそうなキャラクターに尽きる。よほど人生で迷惑な人に出会って困っているのか? いや、それとも本人が……?
(文/是枝 了以)

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