新連載「伯爵が誘うBL短歌の世界」第1回

「五七五七七に萌えをぶっこむこと!」歌壇に新たな刺激を与えたBL短歌の深~い世界とは?

 文学の世界でも、二葉亭四迷による言文一致運動が始まります。それまでの日本語は話し言葉と書き言葉が大きく乖離していて、書き言葉は、皆さんも古文の時間に苦悩させられたでしょう、平安時代中期の文体を正式なものとしていました。現代日本語の口語で書く文体は、二葉亭四迷をはじめ、夏目漱石、森鴎外といった明治の文豪たちが苦労して作り上げたものなのです(森鴎外の『舞姫』のような「え、これが現代国語!?」と驚かされる擬古文は、その過程で生まれた訳です)。

 そして詩歌では、正岡子規たちがそれまでの形式主義に陥っていた旧派の和歌・俳諧を、芸術性の高い短歌・俳句に変革していきました。現代短歌は古く万葉集にそのルーツを求められますが、直接的な先祖は正岡子規、与謝野晶子といった明治の大歌人たちに始まると言っていいでしょう。歌壇・俳壇に流派や家元制度がないのは、それが「近代」の産物だからなのです。

■盛り上がるBL短歌の世界

 さて、僕はゲイでもあります。歌壇にはゲイは少なくないと思うんですが、“オープンリーゲイ”となると話は別で、あまりいないようですね。そんな中で僕は、特に隠す必要も感じていないのでオープンにしているのですが、となると当然、ゲイ的要素を作品に詠むことが少なくありません。

 ある日、Twitterで面白いハッシュタグを見つけました。それが、「#BL短歌」です。

 僕はゲイの「王道」からは大きく外れているんですよね(笑)。無論、人の好みは人それぞれなんですが、その中でも、ゲイの世界では体育会系、マッチョ、筋肉質などが「主流」を占めていることは確かです。ところが僕は、自身が大のスポーツ嫌いという徹底的な文化系だし、好みのタイプも華奢で中性的な美少年です。ということで、こと「男の好み」となると、ゲイ同士よりむしろ腐女子・貴腐人の方が話が合うんですよね〜(笑)。ですから、実は“婦女子嫌い”のゲイも少なくない中、僕は腐女子の友達がたくさんいるし、BLも嫌いではなく、時々ですが読んでたんですよ。

 そこに、「#BL短歌」というハッシュタグじゃないですか。歌人としては食いつきますよね。見てみたら、腐女子の皆さんがやってるらしいんだけど、けっこう面白い作品もあって。そして、2012年、早速仲間に入ったのです。

 その年の11月18日、東京流通センターで大々的に開催された「第15回文学フリマ」にてBL短歌同人誌「共有結晶vol.1」を発表したところ、なんと即日完売という大変なことになりました。たまたま仕事で東下りしていた僕が応援に駆け付けた時には、もう1冊も残っていなかったのです。

 以降2013年に第2号を、そして2014年秋には第3号と、1年1冊のペースで刊行を続けています。その間、各地の文学フリマなどに参加するほか、2014年1月12日には大阪の都心のビジネス街にあるお洒落なお店「文学バー・リズール」にて、若手女流歌人の鳥居さんをゲストに、僕が司会を務めてBL短歌のオフイベントを開催しました。バーのもともとの常連である文学好きの皆さんにBL好きの皆さんも加わって、超満員、白熱のイベントになったんですよ。楽しかった。

 そういった活動を積み重ねる中で、BL短歌の可能性や課題も徐々に浮き彫りになってきています。特に可能性は、大きなものがありそうです。

 短歌は、特に近代以降、「一人称の文学」だとされてきました。日本語の特性として「主語が省略できる」ことがありますが、作品中に主語がない場合、その主体は作者本人だと思って読む、のが普通です。そういった「近代の作法」が現代になって崩れつつあるとはいえ、まだまだ根強いものがあるのです。

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