Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第23回

「これがッ!これがッ!これが『バオー』だッ!」『ジョジョ』を生んだ荒木飛呂彦の個性を凝縮した『バオー来訪者』

―今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

150103_rum.jpg(イラスト/村田らむ)

 荒木飛呂彦は、日本で……いや世界で、最も語られているマンガ家のひとりだと思う。

 彼の代表作である『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズと同じくらい人気のある作品はもちろんたくさんあるが、ジョジョほど語りたくなる作品は珍しいのだ。

“メジャー・オブ・メジャー”の「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していたのに、どこかカルトでマニアックな臭いがする。その臭いのせいで、みんな「自分だけが『ジョジョ』を理解している」と勘違いしてしまう。その結果、“自分のジョジョ論”を語り出すのだ。

 僕も当然、『ジョジョ』には大いにハマったし、語りたいことは山ほどあるのだけど……今回はあえて、荒木飛呂彦の『ジョジョ』よりひとつ前の作品、『バオー来訪者』を紹介したいと思う。

『バオー来訪者』もまた、「ジャンプ」にて1984~85年にかけて連載された作品だ。こちらは『ジョジョ』と違い、全17話という短い作品だった。僕は連載当時12歳。第1話目を「ジャンプ」誌上で読み、

「ああ、なんて映画的な展開をするんだろう!!」

と驚いたのを覚えている。荒木飛呂彦の初連載作品『魔少年ビーティー』はまだ未読だったため、『バオー来訪者』は僕にとって、初めて接触する荒木マンガだった。

 冒頭は、海に浮かぶ女性の死体から始まる。その死体が誰なのか、読者に謎掛けをした後、時間を巻き戻し、高速で走る電車を舞台に、車中で起こった“ある事件”を見せていく。

 研究機関「ドレス」に捉えられていた予知能力を持った少女スミレが、組織から逃亡を計った際、偶然、タンクの中で眠らされている橋沢育朗少年を起こしてしまった。彼は、強制的に実験体に選ばれ、ドレスにより身体を改造。体内に「バオー」と呼ばれる寄生虫を埋め込まれてしまう。バオーは、宿主が生命の危機に陥ると、精神を乗っ取った上で、身体を強力な武器に作り変える。育朗とスミレは、その「バオー武装現象(アームド・フェノメノン)」によって電車から脱出した。冒頭の女性の死体は、スミレを逃したドレスの女性が責任を問わされた結果だったのだ。

 ……と、1話目から凝りに凝って、とても濃い内容だった。小学生の僕はすぐに、ガッチリとハートをつかまれた。

 改めて『バオー』を読んでみると、「悪の組織に身体を改造させられた超人」という設定は、『仮面ライダー』によく似ている。もちろん、よりダーティでドラマチックだが。

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