最初は叩かれた!? 担当者に聞く!アニメ制作会社・スタジオディーンがボーカロイドを生んだ理由【前編】

■「考えてみれば、ボーカロイドって音楽だった」誤解から始まったボーカロイド事業

――アニメ化を見越した自社コンテンツの供給という背景があったということですが、なぜボーカロイドでいこうと思ったのでしょうか?

宮本 ボーカロイドという部分で考えたときに、我々は映像を作るノウハウがあるので、そこから入りやすかったというのもあります。ただ、逆に我々には音楽を扱う部署がないんですよ。アニメの音楽ってOP/EDはレコード会社さんが作って、劇伴音楽も作る。アニメ会社には音楽を扱う機能がない……というところがあって、じゃあ音楽のほうも(手がけようと)……。いや、考えてみればボーカロイドって音楽だなと(笑)。

――楽器ですものね。

宮本 ボーカロイドのキモは、映像じゃなかった! って(笑)。色々誤解したところから、ボーカロイド事業は始まっているんです。そういうこともあって、スタジオディーンでボーカロイドの曲もキチンと提供していこうと。逆に言うと、良い曲を作る人の採用を今やっているところです。

――ボーカロイド事業は、時期的にはいつごろから始まった企画なんですか?

宮本 ちょうどボーカロイドのVer.3が2011年に登場して、そのときに参入しようという話になりました。うちはちょっと作り方を変えてまして……。最初にボーカロイドのキャラクターデザイン『蒼姫ラピス』を作っちゃったんですね(笑)。我々も「よくよく考えてみると、まだ声とか決めてないが、なにをおいてもキャラだ!」って……それで、キャラだけ発表したら、今度は「なんでキャラだけなんだ。ボーカロイドだから歌声じゃないの?」と言われたのが、2011年の6月です(笑)。今考えますとユーザーの意見もよくわかります。それで、『蒼姫ラピス』はその翌年の4月に発売されることになりました。

――先に絵を発表したら、ボーカロイドなのにおかしいぞと(笑)。ビジュアルだけで半年以上を持たせたわけですね。

宮本 その時発表されたボーカロイドとしては、1st PLACEさんのIA(声:Lia)だとか、株式会社インターネットさんのCUL(声:喜多村英梨)とか、色々いらっしゃいました。うちはアニメの会社なんで、ボーカロイドの声として声優さんをブッキングする方法も検討しておりましたが、「それも少し違うな」と思って、もう一方の案である一般公募にしました。ラピスの声もメルリの声も一般からのオーディションで決めるということで、ボーカロイド好き、ボーカロイドになりたい子を募集したわけです。

――一般からのボーカロイドは初めてですよね?

1408_deen3.jpgスタジオディーン製作のボーカロイド『蒼姫ラピス』(画像下)『メルリ』(画像上)。
©i-style project

宮本 そうだと思います。『蒼姫ラピス』は11年6月に募集を発表して、決まったのが11年の10月くらい。そこからボーカロイドを作り始めたので、出来上がりは翌年になっちゃうんですね(笑)。このように、『蒼姫ラピス』と『メルリ』は、ほかのボーカロイドと作り方が全然違うんです。ほかのボーカロイドは出来上がりを見てから発表するので、発表から発売までの時間が短い。うちは余裕で半年以上かかる、みたいな(笑)。発表から発売までが10カ月近くですからね、かなり手塩をかけて作ってました。

 ちなみに、『蒼姫ラピス』と『メルリ』は、もともとiPhoneとかで使える「iVOCALOID」という、その場で手軽に打ち込んで楽しめるものがやりたかったんです。だから楽器を作っているイメージはあまりなくて、手軽に遊んでもらえるツールを提供したいと。

――iPhoneやiPadがあれば、『蒼姫ラピス』や『メルリ』を使って、その場で歌わせられるボーカロイドを作りたかったということですか。

宮本 パソコンを使って一生懸命お金も機材もかけて曲を作るのではなくて、みんなで気軽に楽しめたらいいんじゃないかなと。「ボーカロイドの敷居を下げたい」というコンセプトなんです。僕たちが望んでいたのは、携帯でボーカロイドが使えること。だからラピスも元々の設定は携帯の妖精で、サイズも15センチ。気軽に遊べるボーカロイドだったらいいな、という願いを込めています。元々は携帯用だったので、まだ声がついていない時代に、キャラの絵だけで携帯電話のキャリアさんに営業に行ったりしました(笑)。

――キャラ絵だけで「携帯電話に、うちの『蒼姫ラピス』をバンドルしませんか?」と提案したってことですか。それは無茶な営業ですね(笑)。

後編では、こうして誕生したボーカロイド『蒼姫ラピス』と『メルリ』の活動について、話を伺っていく――。
(取材・構成/三木茂)

■株式会社スタジオディーン
http://www.deen.co.jp/

最初は叩かれた!? 担当者に聞く!アニメ制作会社・スタジオディーンがボーカロイドを生んだ理由【前編】のページです。おたぽるは、インタビューアニメ話題・騒動その他音楽の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!