「母親を否定されるのが一番気持ちいい」 『惡の華』の性表現に込められまくっていた押見修造のフェティシズム

 たとえば序盤で盛り上がったのは、女の子キャラのボトムに浮き出たVラインだ。もうひとりのヒロイン・佐伯奈々子の体育の授業のときのブルマ姿をスクリーンに映し、Vラインを司会のレーザーポインターと押見の指が執拗になぞってくれた。確かにシワの本数が多いなど、描き込みに気合が見られる。司会を務めていた「週刊少年マガジン」(同)編集部の内田朋宏に「このもっこり感は、もはや男」と言わしめるほどだ。

 だが押見本人にとって女子のVラインは、やはりこだわりのポイントのよう。「ヤングマガジン」連載時に友人から「お前の描くパンツはエロくない」と指摘されたのを機に、Vラインを意識して描くようになったのだという。

 こうした股間の描写への情熱は、『惡の華』中学生編が中心。押見いわく「中学生男子は顔か股間に目が行くもの」だからで、思春期の少年たちの心情をくみ取る表現として描いている。対して高校編のヒロイン・常磐文になると、特に強調されて描かれているのは脚。「高校生になると男子は脚を気にし始めるから」という、押見独特の成長観が反映されている。

 女子のボトムへの執着心は、ブルマ以外にもあった。春日がプリントを佐伯の家まで届けに行ったときのシーンだ。パジャマ姿で登場する佐伯だが、ここにも見事なVラインがある。が、編集・内田がさらに注目したのは、パジャマのズボンの真ん中に引かれた1本の筋。

 これはもちろん生地の縫い目であり、ズボンに縫い目があるのは不思議なことではない。ないのだが、何かの暗喩だと意識するたびに会場からは失笑が。押見自身もやはりこだわっているところのようで、他作品も含め「ズボンの真ん中の縫い目を僕は必ず描きたい」と語気を強めていた。

 ほかにも秘密基地で仲村が春日の肩に脚を乗っけるシーンについては「この膝の裏はほんとにこだわったし、うまく描けた」と解説。酔っ払った仲村が春日にふざけてグーパンするシーンに関しては「パーで殴られるほど、つまらないものはない」と名言が飛び出るなど、『惡の華』に隠れた予想外の性表現と押見の性癖が次々と明らかになっていった。

「神は細部に宿る」という。細かすぎて解説されるまで誰も気づかない押見のこだわりと表現が、『惡の華』の妖しい魅力をつくっているのかもしれないと改めて感じさせるイベントであった。
(取材・文/黒木貴啓)
※文中、敬称略

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