『空の青さを知る人よ』、『あの花』よりは泣かないが普通に秀作！ “超平和バスターズ・秩父三部作”最終作！

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■秩父が舞台として光りまくる！

『あの花』『ここさけ』と同じく、『空の青さを知る人よ』も埼玉県秩父市周辺を舞台のモデルとしており、特徴的なシルエットを持つ武甲山をはじめ、豊かな自然が美しく描かれています。

　それだけでも一件の価値がありますが、あわせて、「関東地方にある町だが、都心まで通勤・通学するのは難しい」「田舎すぎず、都会すぎず」「周囲を山に囲まれた盆地で閉そく感がある」といった特徴が、『空の青さを知る人よ』では上手いこと機能していました。

　また、『空の青さを知る人よ』というタイトルは、「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」とのことわざからきています。「井の中」＝秩父で暮らしていても、「空の青さ」＝社会で生きることの辛さや喜びを知ることができると解釈するのが一般的でしょう。

　アニメや映画といった創作物では、「夢をかなえるために上京する」ことを肯定的に描く作品が目立つ気がしますが、『空の青さを知る人よ』では、地元で暮らすのもいいじゃないと言われているように感じました。筆者は数年前に都心から故郷へUターンしたので、よりそう感じただけかもしれませんが。

　ただ、美術に関して言うと、『空の青さを知る人よ』というタイトルなのですから、「空」の描写も凝っているのだろうと考えていたのですが、「おおっ！」と思うようなシーンは特にないのが残念でした。

　無意識に、山本二三さんが描く雲のようなものを期待していたせいでしょう。素人にはわからないような高度が処理があったのかもしれませんが。

■【朗報】吉岡里帆の声優演技、そんなにひどくない！

　あおい役を子役出身で最近声優業を活動のベースにしている若山詩音、金室慎之介／ しんの役を俳優・吉沢亮、そしてあかね役を女優・吉岡里帆が演じています。

　18歳と31歳の同一人物を演じ分けるという難役を、声優業初挑戦で演じるということで、少し心配していましたが、吉沢さんは上手でしたね、感情が高ぶるシーン、しんみりと話すシーン、うめき声や叫び声もしっかりこなしていました。若くても数々の映画やドラマで主演を張り、舞台経験もある俳優はさすがです。

　また、吉岡さんは正直アレですが、あかねというキャラクターがいつもほんわかしていて、感情の起伏があまりないという設定だったこともあってか、致命傷に至っていません。また声質自体は、キャラクターにもよくあっています（井上喜久子さんあたりが演じていたら、とも思いますが）。

　ちなみに、サブキャラクター・中村正道役を、落合福嗣さんが演じています。この正道がなかなかいいキャラなのですが、その息子が正嗣と言います。「嗣」の字は、落合さんに合わせたのでしょうか。もしそうなのだとしたら、現場に愛されていますよね。気になります。

■超平和バスターズの明日はどっちだ!?

『ここさけ』から4年もの時間があり、その間に制作・放送された、長井監督＆岡田脚本のTVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』がアレな出来ということもあって、観賞前は「いいから早く『超電磁砲』の3期を作ってくれよ」などと思っていたものですが、『空の青さを知る人よ』は楽しめました。

　感情の揺れ動きの表現、音楽の使い方、カット割りには長井監督らしさを感じますし、感情をためて爆発させる岡田脚本の瞬発力、田中キャラデも秀逸でした。

　制作を務めたアニメーションスタジオ「CloverWorks」は、現在『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』が放送中、劇場版アニメ『冴えない彼女の育てかた Fine』の公開を10月26日に控えています。キャパは大丈夫なのかと心配していましたが、全体を通して作画もハイクオリティーでした。

　先述のとおり、本作は『あの花』ほど泣かせにはきていません。一気にたたみかけるような盛り上がりも薄く感じましたが、その代わり、ストーリーの齟齬は感じることも少なく、物語としては洗練されているように思いました。

　大型台風の影響もあって、初週の動員と興収は『ここさけ』と比べるとかなり数字と落としていますが、『あの花』『ここさけ』が面白かったという方でも、イマイチだったという方でも、『空の青さを知る人よ』は試してみる価値のある作品だと思いますし、超平和バスターズがまた新しい作品を制作することがあるのか、楽しみになる作品でした。

　ちなみに、『あの花』はいつの間にかパチスロ化されています。パチスロ機としてそこそこ売れたようですから、『あの花』製作委員会も潤ったことでしょう。ということは、また何かしらの動きがあることを期待できるのではないでしょうか。その辺もひっくるめて、今後の展開を楽しみにしたいと思います。
（文・馬場ゆうすけ）

 
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