炎上続く『ヒプノシスマイク』舞台化発表で思う、公式よお前の血は何色だ

■楽しい日々をありがとう

 最後にコミカライズにショックを受けた私のその後について触れたい。

 私自身は2018年12月のコミカライズ1発目で早々に残機がゼロになったため、それ以降は公式情報は避け、お気に入りの二次創作だけ読みフォローも厳選し、また、まったく違う作品を鑑賞するなどあれこれ自分をなだめてきた。私にとって2019年は「『ヒプマイ』地鎮祭」の1年だったと言える。

 しかしそんな村人たちの祈りをあざ笑うがごとく、さらなる厄災として降りかかったのが今回の『ヒプマイ』9月の乱(キャラ追加+2.5次元発表)だ。FF7で言うなら「メテオ」的インパクトだ。

 2018年12月、コミカライズを見て思った「うそでしょ」「悔しい」「泣けてくる」という気持ちが、コミカライズ発表後9カ月が過ぎたとういうのに「新キャラ発表」で同じ強さで再現されたことに自分でも驚いた。そしてそれは「2.5次元化発表」でますます加速した。

 そうなるともう止まれない。公式に腹を立て、Twitter上で『ヒプマイ』ファンの「怒っている人はそこまで怒れるんだろう……(首をひねる顔文字)」や「さっさと降りてwチケ取りやすくなるし」みたいな発言を見てさらに血圧を上げるという、おうちにいながら地獄めぐりの日々がまたやってきてしまったのだ。

 今まで私はここまでの規模の「公式のご乱心」ジャンルに遭遇したことがなかった。そのため、公式に腹を立てているオタクを見てもそれまでは「キャラを人質って何の冗談w趣味の世界で何もそこまで盛り上がらんでも……。逆にいい歳した大人でそこまでのめりこめるものがあるって、いいことなんじゃない? それとも不幸キャラな私アピなのかな」とすら思っていた。しかしいざ自分がそうなってみると本人はいたって真剣に不幸で全然幸せではないのが骨身に沁みるほど分かった。趣味の世界でここまでイライラしている自分に本当にうんざりしているのに、止まれないのだ。

 私としても腹を立てるよりはすみやかに忘れたかったため、新しい作品を好きになろうとさまざまな作品を積極的に鑑賞した。心を慰める良作にいくつも出会えたものの、『ヒプマイ』ショックをなかったことにしてくれるような、FF7で言うならメテオをなかったことにしてくれる「ホーリー」的な作品にはまだ出会えていなかった。

 なお、オタクならわかると思うが必ずしも「良作=推し」ではない。オタクがよく言う鬱陶しいセリフの1つに「ん~、あの作品は面白くて好きなんだけど、萌えじゃなくて燃えなんだよね」というものがある。「萌え=推し」だが、「良作=萌え=推し」とはならないのだ。

『ヒプマイ』は12月にアプリもリリースする。どうせあの公式のことだ、血圧が400くらいになりそうな展開を仕掛けてくるに違いないだろう。それでもキャラを人質に取られ未練がある以上、自分の精神を消耗させるだけの死の行軍は続くのだ。おのれ公式、お前の血は何色だ。脳漿かき乱すヒプノ死すマイク――、そんな真っ暗闇のある日の夜。Pixivでまったく別作品の、あるキャラクターの一枚絵を見かけた。あ、このキャラ前も見かけた、と、なんとなくクリックしてみた。

 その時点でそのキャラにそこまで期待していなかった。

 1時間後。

 脳内の死の行軍が「お先に失礼します」とあっけなく散り散りになっていた。メテオが止まった(クララが立ったの感じで)。昨年末のコミカライズから待ちに待ち望んだホーリーが発動した。新推しが来た。何の作品の誰なのかはその作品にも『ヒプマイ』のファンにも失礼すぎるので差し控えたい。

 恋愛事情における過去の処理において、男性は「フォルダを増やす(思い出は大切に)」、女性は「上書きする(思い出? 別に……)」とよく傾向が比較されるが、ホーリー発動後に『ヒプマイ』を見ても、あっけなく「1枚ガラスを隔てた」感になれていた。待ち望んでいた新しい朝、希望の朝がついに訪れたのだ。

「公式マジムカつく、あたし降りっからマジで」と息まいたところで、結局まだぷりぷりしているうちは、残念ながら未練たらたらで、きっと1か月後も同じことを言っている。だからこそつらい。

 しかし死の行軍がホーリー発動により「お先でーす」と解散すると本当に「1枚隔てた」感じになる。というより、優先順位の筆頭が「ヒプマイに腹を立てる」ではなく「新しい推しのかわゆな姿見う」になるのだ。オタクとしての圧倒的勝ち組「楽しけりゃいいじゃん」に、ついにクラスチェンジできたのだ。

 コミカライズが発表された昨年12月からずっと地鎮祭をしても消滅する気配が見えてくれず、9月の乱でさらに大噴火となったそれがようやく成仏してくれた。

 その新推し、新推しを作ってくれた原作者さん、およびイカす二次創作を作ってくれた二次創作作家の皆さん、全員に感謝したい。自分では9カ月かけても解消しない困難な状況にいた私を救ってくれた。

 新推しには感謝しても感謝しきれないが、つくづく今回『ヒプマイ』で「ハマることの怖さ」を嫌というほど知ったので、そのキャラについてもあまり深入りしないよう重々気を付けたい。割り切れたり、サラっとしてる人ならいいが、私はそうではないのが今回でよくわかった。

 あと控えたいと思うのはTwitterだ。今回『ヒプマイ』にはまったのはTwitterがきっかけだった。前ジャンルの神絵師が『ヒプマイ』の絵を投稿しだしまんまと釣られたのだ。Twitterはライブ感があって楽しいのだが、それゆえ依存しやすい。萌えているときは『ヒプマイ』のイケてる二次創作を見て、炎上したときは愚痴つぶやきに同調してと、健やかなるときも病めるときも「スナック青い鳥」に入りびたりになってしまっていた。今回はPixiv主体のマイペースで穏やかなスローオタ活を心掛けたい。

 また、漫画やアニメなどストーリーありきのコンテンツと異なり、『ヒプマイ』のようなプロジェクトものは「後出し」がしやすいと言え、キャラを人質に取られたり、裏切られる可能性も強くなる。『ヒプマイ』ははっきりしたストーリーが出る前にはまりすぎていたのだ。今後は「ストーリーがしっかりしている作品」を選ぶよう気を付けたい。

 最後に、『ヒプマイ』のキャラクターデザインは個性があって魅力的だったし、声優はキャラクターにあっていて、いい楽曲もたくさんあった。そしてAIで培われた「公式越え」な二次創作もたくさんあった、というより二次創作の方が面白かった。それらは今も変わらず好きだ。コミカライズが発売されるまでの日々は本当に楽しかったと今、素直に思える。

 しかし、そこに至るまでが本当に長かった。だから今もしんどい最中にいる人が、早く楽になることを願っている。

(文/石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/])

◆石徹白未亜の過去記事はこちら(【おたぽる】【日刊サイゾー】)から◆

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