35歳以上の中高年が「オタ活」を楽しむための秘訣とは?『「若者」をやめて、「大人」を始める』レビュー

『「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?』(イースト・プレス)

 今の日本、特に都市部における実質的な成人年齢は「35歳」ではないだろうか。厚生労働省におけるニートの定義は「15~34歳までの家事、通学、就業をせず、職業訓練も受けていない者」であり、ジャニーズグループ・NEWSの歌「weeeek」にも、35歳をすぎた自分はイケてる大人になれているのか、という趣旨の歌詞がある。

 容貌や体力の衰えのきざしもしっかり見えてきて、いい加減もう若くないと悟り出す35歳。ここでぶつかる戸惑いや混乱が「中年クライシス」だが、当原稿ではそんな中年の「オタ活」について、精神科医であり、ゲーマーでもあった熊代亨氏の書籍『「若者」をやめて、「大人」を始める』(イースト・プレス)から読み解いていきたい。

 


■大人が不在な日本フィクション界において、オタク界隈は特に神がヤング

 まず、オタクに限らず日本は中年が主役のフィクション作品が少ない。日本の少なくない中年がクライシスしてしまう原因として「フィクションの世界に中年のスターがいないから」は侮れないくらい大きいのではないだろうか。

 一方、欧米圏の海外のドラマや映画を見ると、40代以上の男女が主役の作品も少なくない。中年が銃撃戦をしたり、中年のライバルと丁々発止のやり取りをしたり、中年の恋人とベロチューを交わしていたりと何かと「現役」だ。日本フィクション界において中年以上は「若い主人公を見守る」という毒にも薬にもならないポジションにいきがちだが、海の先を見ると成熟性を日本よりは重んじる文化の違いを感じる。

 日本はただでさえフィクション界が若いが、さらにオタク界において「推し」の対象になるアイドルやゲーム、漫画、アニメのキャラクターはさらに若くなりほぼ10代だ。

 なお、私もそんな二次元の美少年が生きがいなオタクなので「フィクション界は中年ばっかりになるべき」とは決して思わないが、推せる中高年のキャラクターがもっといてほしい。いないから推せないというのもある。若さをキャラクターの魅力の根拠としない『ルパン三世』はすごいと今更思う。

 特に日本フィクション界において「かっこいいおばさん、おばあさん」は希少だ。「かっこいいおばさん、おばあさん」は美少女を描くより圧倒的に競合が少なく差別化を図りやすいブルーオーシャンともいえるが、この山を制覇せんとするクリエイターはほぼいない。

 

■見た目は中年、心は思春期――幸福なオタク少年少女のその後

 日本において、オタクたちたちが「我、オタクぞ!」と自覚しだすのは大体思春期ごろだろう。アイドル、ゲーム、漫画、アニメなどの「ティーンエージャーの神」に会い「推す」という行為を知り、灰色の世界が輝きだすのだ。

 そして20年後、何度か代替わりした神は相変わらず可憐なティーンエージャーだが、オタク側は年を取り「見た目は中年、心は思春期」という、逆江戸川コナン君みたいになるのだ。しかし別にこれが「ダメ」なわけではないし、骨の髄からロリ、ショタ属性の人たちにとっては、おそらく世界きってのロリショタ大国・日本に生まれたことに圧倒的感謝の日々だろう。

 一方で「中年になりオタク趣味を続ける大変さ」は少なくない人に心当たりがあるのではないだろうか。

 39歳の私は、二次創作をするタイプのオタクだ。同人誌即売会にもたまに出る。飽きっぽいため二次創作の対象のジャンルをころころ変えるのだが、中高年が多かったり、老いも若きも入り混じっているジャンルだと「超オタ活楽し~!」とイキっていられる。しかし、干支を一周下回っても、まだタイムリープの必要を感じるくらい若者中心のジャンルに初めて参加したときは非常に気後れした。

 中には「私(俺)は中高年で若い人の多いジャンルで交流するけど、楽しいよ?」と異論のある方もいらっしゃるかもしれない。この場合「書いてる作品が死ぬほどエモい(神作家はエイジレス枠)」や「当人の言動に魅力があったり、ジャンル内で権力がある」ことを願わずにはいられない。「若い人に気を使われているのに本人だけ気づいてない」なら、気を使っている若い人があまりにも報われない。

 本来、作品勝負の二次創作ですらこうだ。動体視力など身体能力の衰えがスコアに直結する本格ゲーマーや、若手ファンが多いであろう若手アイドルの追っかけ、コスプレなどは、さらに加齢がきついオタク分野なのではないだろうか。

「世の中のほかの趣味に比べ、同担が圧倒的に低年齢」。これが中高年オタ活のつらさなのだ。

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