次々と実験作のごとき、萌え4コマを繰り出せるのは、大手の余裕なのでしょうか。吉辺あくろ『先生!休ませてください!』(メディアファクトリー)は、またまた新手のスタイルの4コマです。
この作品。系統としては『けいおん!』(作:かきふらい/芳文社)が、生み出した、あのスタイル。すなわち、女の子たちが教室に集まって、アレコレ話しているだけでギャグが生まれていくというヤツです。
もしも『けいおん!』の亜流みたいな雰囲気の、ただ、女子が楽しそうに話しているだけだったら、わざわざレビューで取り上げようとは思いません。考えてみれば、『あずまんが大王』(作:あずまきよひこ/メディアワークス)以来、いったい、いくつの作品にまみれてきたのか。
でも、この作品には、そうした使い古された感のあるシチュエーションに一石を投じよう。あるいは、イノベーションを巻き起こそうという勢いを感じます。
なぜなら、この作品で女子が楽しく話す舞台は、保健室だからなのです。
保健室というのは、学校ならどこにでもある、あの部屋。フツーなら、怪我をしたとか気分が悪いから訪れるところです。でも、もう一つ保健室には役割があります。それは、クラスに馴染めない生徒を受け入れるというもの。クラスに馴染めない不登校気味の生徒が、ギリギリ学校にやってくる「保健室登校」というのは、どこの学校でも起こりがちな問題です。
この物語のヒロイン・水野さなは、ズバリそれ。美少女なのに根暗な文学少女の彼女は、クラスに馴染むことができずに、孤立した挙げ句、仮病で保健室を利用しているのです。
もう、見た目は激烈に美少女なのに、人付き合いは大の苦手、音楽の授業や体育の授業で二人一組を指示されるのは、彼女にとっては悪夢です。
いや、見た目が美少女なためか読んでいるウチに、どんどん守ってあげたい感が生まれてきます。と、同時に、これまで人生で様々な体験をした筆者は「リアルなら、絶対にメンヘラだよな」とも考えるわけですけど。ああ、メンヘラとの恋愛は最初の数日間だけは楽しいですよね、実際。
さてさて、さなが「つらい、休憩しよ」とやってくる保健室には、妙な出会いがいっぱい。なぜか熊のパーカーを常用している東風谷ハル、重傷にしか見えないのに元気いっぱいに、絆創膏をもらいに来る火比野ニコと、重度のメンヘラ……じゃ、なかった美少女が次々とやってくるわけです。
そんな、この作品には、そんなキャラ設定以上に次世代的なものがあります。それは、保健室の先生を男性として設定していること。
この系統の作品って、とにかく男性キャラを排除する傾向があったのですが、根幹のところに据えるのだから挑戦的です。場合によっては、読者から引かれてしまう可能性も否めません。でも、この作品ではそうならない。なぜなら、奇人変人な生徒よりも、先生のほうが奇天烈なのですから。
最初から、医者でもないのに「ドクター」と呼べとか、ロリコンで小学生以下は対象外と胸を張って認める野郎に、誰が嫌悪を抱くでしょうか。読者は思うはずです「自分にも、こんなに正直に生きることができる空間が欲しいな~」と。
ひたむきに、おかしなキャラばかりで物語を埋め尽くそうとするこの作品。萌え4コマも新しい時代に突入していますね。
(文=大居候)
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