安ければ本は読むもの? トラブル続きのamazon読み放題サービスを著者の立場で考える

■フジテレビと朝日新聞に出たところで本は売れない

 ちなみに私の書籍のテーマはネット依存で、本の内容に関しフジテレビと朝日新聞社から取材を受けた。超巨大メディアに報じられたらさすがに売れるのではとソワソワしたものの、両社とも広告主への配慮からか私の書籍名は一切紹介されないまま放送、発行され、もちろん先方の仕事上それは仕方がないことだろう。しかし、やはりその程度だとわざわざ私の名前を検索し、書籍までたどり着いてくれる人など相当少ないはずだ。

 案の定、テレビ、新聞取材当日と翌日の売れ行きを著者セントラルで見てみると普段どおりのしめやかさだった。「マスメディアに出れば本は売れる!」といったコンサルティングも見かけるが、いいものを書けば売れると限らないように、新聞やテレビに出れば売れるなんて、そんな単純な話ではない。ちなみに私の場合は、リアルな販売の場では横浜の書店で特設販売コーナーを設けてもらった際と、amazonではネットメディアで書評が紹介された日や、ネットで多くの読者がいるブロガーの人に紹介してもらった日、これらの日の方がテレビや新聞に出た日よりもずっと売れた。

 そしてamazonでの売れ行き状況を著者が把握できるのも、amazonの著者セントラルがあるからだ。全国に店舗のある紀伊國屋書店でも、全店売上データがわかる「PubLine」というサービスを提供しているが、月額10万円と個人として利用するにはかなり厳しい金額だ。著者セントラルは無料で利用できる(著者セントラルは「自著」の売れ行きしかわからないので、全体の売れ行きがわかるPubLineとはサービスの幅がまったく違うが)。

 個人的には店舗で働く仕事も長くしているため「店舗で試したあとで、ネットで底値の店舗を探して購入」という購買行動をする人には天の裁きが下るようにと思っているし、ひとつの企業だけが圧倒的に強い状況は業界、消費者双方に望ましくなく、そもそも同じ条件ならなるべく日本企業のモノやサービスを購入したい。なのでamazon一強、amazon無双な状況は望ましくないと思うが、amazonは著者セントラルのような、他がやらないいいサービスを無償で著者に提供している。黒船は黒船になる理由がある。

 ちなみに私の著者セントラルのグラフは読み放題サービスを始めだした8月上旬から1ヶ月ほどは下がることなく景気がよかったが、だんだん低空飛行になりつつある。読み放題サービスに加入する人がラインナップ減少報道の影響で減ってきているのか、本の読み放題は一部の人にだけ刺さるサービスだったのか。今後も見ていきたい。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

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