安ければ本は読むもの? トラブル続きのamazon読み放題サービスを著者の立場で考える

■amazonが著者に提供している気の利いたサービス「著者セントラル」

 この読み放題サービスの件に関してはamazonのやり方に思うところはあれど、一方で、amazonには著者として感謝しているところも多い。まず、2014年に発行された私の本は、書店だと置いているところはまずない。書籍名と駅名など地名を入れると、近隣の書店の在庫を調べてくれるウェブサービス「テイクストック」で自著を調べると、八重洲ブックセンターや丸善本店など巨大書店が聳え立つ東京駅周辺でも、もう在庫すらない。数年前に発売され売れ行きも芳しくない本を置く余裕など書店にないのはよく分かる。なのでamazonが自著をいつまでも取り扱ってくれること自体、とても助かる。

 私の本同様、世の中に出回る多くの本が初版止まりだ。重版を続ける一握りの大ヒット作が、残りの初版止まりの振るわない本を支える構図になっている。本が版を重ねることを指す『重版出来』は、ドラマ化された漫画のタイトルになるほどめでたいことなのだ。

 私は趣味で同人誌を出している。同人誌は自分の金で出すため大変だが、責任を全て自分一人で取れる気楽さがある。一方商業出版はそうはいかない。出してもらっているのであり、多くの人が関わったものだ。ある経済評論家が本を書くより売る努力をしているといった旨をつぶやき炎上したことがあったが、いい内容だと確信した上で大抵の本が世の中に出ているはずなのに、一握りの売れる本とそれ以外の大多数の売れない本に分かれてしまうのが現実なのだから、売る努力をする経済評論家の発言はいたって正論だ。

 知名度のある人が書けば話題になるし売れやすい。何を書いたかでなく誰が書いたかは重要視される。そんな中で新人にチャンスを与えてくれたのだから、塁に出るのがルーキーの仕事だったはずだが現時点で初版止まりと役割を果たしきれていない。今回の読み放題サービスは、出版社が賛同するなら私も賛同する方針だ。

 そしてやはり読み放題サービスになると読まれる。amazonでは「著者セントラル」という売れ行きをグラフ化したサービスを著者に無料で提供している(図)。図の通り、「何冊売れたか」は分からないが、amazonのランキング何位にいるかは分かる。図を見ると、8月3日以降の読み放題サービス開始時以降から1ヶ月はランキングが跳ね上がったまま落ちない。毎日別の人が読んでくれたのだろう。8月以前の心電図のようなアップダウンが激しい状況からグラフの形が明らかに変わっている。私自身は、本は読みたいものだけ読めればいいし、読書熱自体高いときと低いときがあるので、月額制の読み放題サービスには利用者としてまったく魅力を感じなかったが、「安ければあれこれ読んでみるのもアリ」という人が案外いることを知れただけでも発見だった。

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