2016年、アイドルネッサンスが駆け抜けた夏──8人の少女たちの誰も知らない物語

1609_aidol.jpg「アイドルネッサンス」公式サイトより。

「真実は残酷だ」

 2016年、アイドルネッサンスの夏は、この言葉から始まった。

 7月26日にリリースされたシングル「君の知らない物語」(T-Palette Records)の一節だ。

 落ちサビの最後、センターの石野理子は、秘めた想いを押し殺すようにそのフレーズを歌う。歌詞の内容は、大人になった女性が、若い日の苦しい片想いの出来事を振り返るというもの。

「若い日」とは言っても、おそらくは高校生か大学生ぐらい、平均年齢15才のアイドルネッサンスメンバーからすれば、少しだけ大人の思いを歌っていることになるだろう。

 アイドルネッサンスの魅力のひとつは、この大人と子どもとの、視点と成熟の綾にあると思う。彼女たちが新たな曲をカバーする時、まずは歌詞を読み込むところから始めるという。

 当然、彼女たちと同年代の女の子の気持ちを歌った曲ばかりではない。むしろ、もっと大人の男性が、恋愛や、夢や、青春や、人生をより深く、達観したような視点で描いた曲が多い。

 そんな歌を、若い彼女たちが理解し、歌いこなせるのか?

 そう思う人も多いだろう。だが、できるのである。その理由は、彼女たちのパーソナリティにある。

 アイドルネッサンスのメンバーは暗い。そんな言葉を時々耳にする。

 もちろん、アイドルである以上、ライブ中やイベントのときに暗い顔をしていることはない。しかし、インタビューやブログからにじみ出る言葉の端々に、ネガティブな感情が見え隠れすることは確かにある。

 どのような過程を経て、現在のメンバーが選ばれたか。その経緯は省くが、歌唱力、ルックス、パフォーマンスに加え、なんらかの内面的な評価も加わって、このメンバーになっているように思う。

 そう、私は別に「暗い、ネガティブ」であることが悪い、と言いたいわけではない。それは裏を返せば、「世界を深く見つめ、考察している」ことの証左でもあるからだ。

 デビューして2年と少し、今までにカバーした曲は50曲を超える。彼女たちは歌を通して、それだけの人生、物語を体験しているのだ。

 実際に特典会などで相対する彼女たちは驚くほど幼い。無垢な姿の中で、数々の物語を経験し、精神が成熟している。そのバランスと、奥深さがたまらなく魅力的だ。

 今年の夏、アイドルネッサンスはたくさんのことに挑んできた。

 先の新曲リリースイベントでは、体調不良により休んだり、歌えなかったりしたメンバーが出た。しかし、実はそんなときほど、他のメンバーでカバーし、支え合い、いつも以上に気迫のこもったステージを見せてくれた。

 猛暑の中開催された『TOKYO IDOL FESTIVAL 2016』では、メインとなるHOT STAGEをはじめ、野外ステージやコラボライブなど計8つものステージをこなし、合間にはスペシャルドリンク販売や特典会などでファンとの交流も積極的に行った。

 また、Twitterやブログでは、出場していた他のアイドルたちとのツーショット写真なども多数掲載され、「メンバー全員が人見知り」と言っていた彼女たちが、少しずつ社交的に成長している姿がとても微笑ましく感じた。

 その他にも、東京・大阪・名古屋・仙台で開催された初の全国ツアー、「TEEN’S ROCK IN HITACHINAKA」「サマーソニック 2016」などのフェスへの出演、様々なアイドルとの対バンライブ、全国のアイドルがアニメソングのカバーで力を競う「愛踊祭(あいどるまつり)2016」への出場(ちなみに現在第3次予選まで勝ち残り、9月10日に行われる決戦大会に駒を進めている)など、まさにめまぐるしいほどに精力的な活動を行ってきた。

 それほどまでに頑張れる彼女たちの原動力は一体何なのか。

 7月に行われたトークイベントで「将来の夢」について尋ねられたメンバーは、口をそろえて言った。

「今はアイドルネッサンスでいることが全てで、先のことは考えられない」

 そうなのだ。彼女たちはとにかく今を全力で生きているのだ。

 それは、先のことを考えずに生きる刹那主義などとは違う。

 先に書いたように、彼女たちはたくさんの歌の世界を生きることによって、様々な経験をしている。

 恋の歌を歌っていても、もしかすると現実の恋など知らないうちに、その喜びや切なさ、苦しさなどを学んでいるかもしれない。

 その中で、とにかく今を全力で生きること、その大切さを知ったのではないだろうか。

 そして、本当の希望なんて、絶望の果てにしかない。それに彼女たちは気づき始めている。

「真実は残酷」──いつの頃からか気づいていく真実。でも、人はその残酷さに負けない勇気を持つことができる。それは若さであるかもしれないし、純粋さであるかもしれない。

 真っ白な制服を身にまとった8人の少女たちは、まるでその現実に戦いを挑むかのように、純粋に、一途にに歌い、踊り続ける。

 彼女たちはこの夏、私たちの知らない物語を経験して、また少し、大人に近づいていったのだ。
(文=プレヤード)

君の知らない物語

君の知らない物語

新体制となって初のシングル

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