本格的VRゲーミングの時代がはじまったばかりだが、早くも次の展開がいくつか見えはじめている。そのひとつに挙げられるのは、ある程度広い敷地で楽しむ多人数VRゲームの可能性だ。
■広い空間で多人数同時プレイが可能なVR技術が完成
いくらVRゲームだといっても、ゲームの舞台となるフィールド上を実際に足を動かして歩くわけではない。いや、もちろん前進の操作と一緒に実際に歩いてもいいのだが、大概のプレイヤーは単純に部屋が狭くて無理だろうし、Oculus Riftではケーブルが4mほどなので自ずから行動半径は限られてくる。ケーブルの問題は今後のハード的進化を待つことになるが、実は広い部屋で多人数同時のVR体験を実現するシステムはもう完成段階にあるようだ。
米・カリフォルニア州サンタバーバラを拠点にするWorldViz社が先日、体育館や倉庫など広い屋内施設で使うことを前提とした多人数同時プレイが可能なVR技術「Precision Position Tracking (PPT)」 システムを発表した。
PPTは誤差1ミリ以下という高精度の追跡システムを用い、カメラやセンサーと連動してプレイヤーの位置と動きを把握。50m×50m程度の範囲内で同時に10人までのVRゲーミングを可能にするシステムだ。2002年に開発がスタートしたこのPPTは、もともと各種の学術研究用に開発されたシステムだったという。しかし本格的なVR機器が登場することもあってか、ゲーム開発にも応用できるようにゲームエンジンの「Unreal Engine 4」と「Unity 5」へのプラグインが今月末までに用意されることになり、VRゲームシステムとして可能性が広がることになった。このシステムを使って楽しそうなゲームといえば、サバイバルゲーム的な多人数シューティングが真っ先に思い浮かべることができるだろう。
現状ではHTC Vive用のシステムなっているが今後すぐにでも Oculus RiftやGear VR、PSVRに加えて先頃発表されたグーグルのDaydreamにも対応させていくということだ。基本セットの価格は1万5000ドル(約160万円)で、カメラやセンサーの数に応じて価格は変わる。PPTシステムを駆使していったいどんなVRゲームが楽しめるようになるのか期待したい。
■ゲームデザインの作業もVR空間で
一方、VRゲーム開発の環境は着実に整いつつあるようだ。エピック・ゲームズは先日、同社のゲームエンジンUnreal Engine4(UE4)のアップデートを行い、バージョン4.12を公開。修正点は計106カ所にも及び、その結果VRゲーム開発がきわめてやりやすいものになったのだ。それというのも、開発者自らがVR空間に入り込んでゲーム作りを行なえるようになったからだ。
動画ではゲームの舞台となる石造りの建築物をデザインしている模様が綴られているが、VRヘッドセットを装着して両手にOculus Touchのようなコントローラを持ったゲームデザイナーが、3D空間の中で構造物を動かしたりコピーして追加したりと、ゲームデザインがまさにゲームをプレイしているようである。
「これまでのVRゲーム作りが、PCの前に座ってマウスとキーボードで行なっていたのは、よくよく考えてみると奇妙なことです」と「The Verge」の記事で語っているのは、エピック・ゲームズの創業者であるティム・スウィーニー氏。3DのVR空間を作り手側があまり実感しないままに開発を進めていくのは、確かに奇妙なことのように思えてくる。しかし、このUnreal Engine4の最新版で、ようやくVRゲーム作りが“プレイヤー目線”で可能になったということだろうか。制作環境が整いつつあるVRゲーミングにますます期待が膨らむ話題だ。
(文/仲田しんじ)
【参考】
・Gizmag
http://www.gizmag.com/worldviz-warehouse-scale-vr/43549/
・The Verge
http://www.theverge.com/2016/2/4/10908444/epic-unreal-engine-editor-vr-edition
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