姫乃たまの耳の痛い話 第22回

自分を捨てたバンドマンを見返すためにアイドルに……「女としての魅力」とは何かを考えさせられた日

 一方で 、彼女が夢中になったのは「乙女ゲーム」と呼ばれる、男性キャラクターとの恋愛シミュレーションゲームです。彼女は、自分が恋をするなんてことは考えたこともなかったため、乙女ゲームは“現実の恋愛の代用”という感覚ではなかったそうです。そんな彼女にとって、ゲームから飛び出してきたようなヴィジュアル系のバンドマンたちは、憧れを抱く対象としてごく自然な存在でした。

 高校生から始めた本屋のバイト代の使い道をようやく見つけた彼女は、日本武道館や両国国技館など、大きな会場で行われているライブに足を運ぶようになりました。何度かライブへ行くと、終演後の帰路でチラシを配っているバンドマンの存在に気がつきました。初めて間近で見るバンドマンに「本当に存在しているんだなあ」と驚き、同時に、小規模なライブハウスで演奏しているバンドがたくさんいることを知りました。

 それからは、地下にある小規模なライブハウスに通うようになり、ある日、気がついたらバンドマンの自宅にいました。そうして初めて、「周囲から女として扱われていなかった自分」に気がついたのです。細く見えていたバンドマンの体も、彼女よりはずっと力強いのでした。彼女が18才だった頃のことです。

 しかし、ようやく自分の中の“女”を認識した彼女は「今したことは、恋人になるとか、そういうこととは関係ないからね」という彼の一言で地面に突き落とされます。

 女になってしまった自分と、突然訪れ、あっという間に散った現実の恋。着信も拒否され、ライブへ行っても今までのように目を合わせてくれない彼を、それでも諦めることはできませんでした。彼女が思いついた彼との関係を戻す方法はただひとつ。「舞台の上と下ではなく、対等になること」でした。

「歌も踊りもうまくない若いだけの女の子たち」が舞台に立っているということは、ライブハウスに置かれているビラで知っていました。しかも、彼が出演しているのと同じライブハウスに。

 それから数カ月が経ち、本当に地下アイドルになった彼女は、「同じステージに立てば彼に認めてもらえる」と、今も信じて疑っていません。

「地下アイドル(としての活動)は、どうですか?」と聞くと、彼女は「ファンがひとりもつかない」と言い、「やっぱり女としての魅力が足りないのでしょうか?」と反対に質問されてしまいました。私はインタビューをしている間、彼女に魅力がないとは一度も思いませんでした。きっとステージに立っている時も、ライブに集中できていないのだろうなあ。

 自分のファンが、同じ動機で舞台に立とうとしてきたら。そしてバンドマンの彼もまた、他の誰かを見返そうと舞台に立っているのだとしたら、彼女はどう思うのでしょう。

●姫乃たま
1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。地下アイドル/ライター。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。

[地下アイドル姫乃たまの恥ずかしいブログ]http://himeeeno.hatenablog.com/
[姫乃たまのあしたまにゃーな]http://ameblo.jp/love-himeno/
[twitter]https://twitter.com/Himeeeno

バンギャルちゃんの日常

バンギャルちゃんの日常

この中から生まれたアイドルもいる……?

自分を捨てたバンドマンを見返すためにアイドルに……「女としての魅力」とは何かを考えさせられた日のページです。おたぽるは、人気連載アイドルアイドル&声優の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!