女優志望のアイドルは演技へのやる気が違う!?　映画『ソフテン！』の脚本・なるせゆうせい氏に聞くアイドル映画の可能性

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――ご当地アイドルありきの映画という感じがしますが、そうすると、キャラクターのイメージや演技力よりも、各ご当地アイドルのグループで人気のあるメンバーというのが、キャスティングの際の優先事項だったのですか？

なるせ　ご当地アイドルありきの部分はありますが、キャストのイメージは頭にありました。キャスティングの際、一番悩んだのは、九州のご当地アイドル・GALETTe*の四島早紀ちゃんですね。配役として候補に挙がったのが、不良キャラの阿部羅々役か、すましたニヒルな感じのキャラの遠藤覚子役でどちらにしようか迷ったんです。ただ、羅々は不良キャラなので、前に出ていかなければならないし、喧嘩もしなきゃいけない。なので演技未経験の四島ちゃんは、無口でニヒルなキャラにして、ちょうどその時出演が決まった、演技の実戦経験豊富な美麗ちゃんに羅々役をお願いしました。

――アイドル映画は、ほかの映画と比べるとチープなイメージがありますが、映画の作り手として、そうしたイメージをどのように払拭させようとしていますか？

なるせ　先ほども言ったように、チープになりそうなところを、逆に活かせないかなと工夫しました。登場人物たちがヘタレ女子なら、新人女優たちのよさが活かせるのかなって。『ソフテン！』という作品の場合、普通の女優さんばかりを集めるのか、あるいはアイドルでもある女優の卵たちを集めるのか。どちらにしようかと思ったとき、この作品はアイドルたちに焦点を絞って、ターゲット層もアイドルファンに絞って作品を作ったら上手くはまるのかなと思ったんです。結果的に映画を見てもらった反応として、「アイドル映画だと思って見たら、意外としっかりした作品だった」という感想もいただきました。

■女優志望のアイドルは現場での意識が高い

――アイドルが出演する作品と、普通の俳優が出演する作品とでは、脚本の書き方に違いはありますか？

なるせ　ありますね。アイドルが出演する作品では、こういうことを言わせたら面白いだろうなということを、少し盛り込んだりします。アイドルの子たちが、普段は言わないかもしれないけど、この映画に出るなら、こんな台詞を言わせたら面白いなって思うんです。

――例えば、どんな台詞ですか？

なるせ　特に不良キャラの羅々は、「なにみとんじゃこら？」みたいな喧嘩腰にすごい言葉を発するので、アイドルの時の美麗ちゃんが使わないだろうという言葉を言ってもらったりしていますね。

――なるほど。なるせさんは、ほかにもアイドルが出演する作品を手掛けていますが、アイドルが演じるからこそ、入れるとおいしいシーンなどはあるのでしょうか？

なるせ　今回の『ソフテン！』にかんして言うと、多田ちゃんにラブシーンみたいなのがあるのですが、そこをあえて外した感じにしていますね。カッコいい男の人と恋愛するのは面白くないですし、観客にとってもタブーというか、「違うな」という感じがするので。この作品にはイケメン好きの築野生子というキャラクターもいるのですが、多田ちゃんが演じる黒地静は、根暗でソフトボールにも触れないようなボール恐怖症だけど、ソフトボール部にいるというキャラなんです。そして物語では、ソフトボールの指導をしてもらうために、男子野球部のイケメンを築野が呼びにいくのですが、黒地はそのイケメンに恋をするのではなく、同じ野球部にいるすごく不細工な男の子に恋心を抱くんですね。これがなんか面白いというか、かわいいというか、映画を見ている男性も逆に共感を持ってもらえるのではないかと思います。

――では、撮影の際、出演するアイドルたちに合わせて脚本を書いたにもかかわらず、彼女たちがうまく演技ができなかった……というようなことはありましたか？

なるせ　そういうことはなかったのですね。キャスティングも、将来は女優として活躍していきたいという子をメインで選ばせてもらったので。そういうモチベーションがあるかないかで、撮影はけっこう違うかな。アイドルでもモチベーションが高いと、現場への挑み方が違いますよね。「なんで私がここにいるんだろう」みたいな感じじゃなくて、「これが女優へのステップ」という気持ちで臨んでくれていたし、映画に出演すること自体初めての子たちが多かったので、この作品をひとつのきっかけにしたいという彼女たちの意識も感じました。

 
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