女優志望のアイドルは演技へのやる気が違う!? 映画『ソフテン!』の脚本・なるせゆうせい氏に聞くアイドル映画の可能性

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――作品を通して、成長を感じた人はいましたか?

なるせ 多田ちゃんは、女優として自分でちゃんと考えられる能力を持っているんだなと思いました。根暗でボール恐怖症の役ですが、歩き方や表情など、脚本に書いていないところまで考えて役を作ってきてくれてたんです。

――では、演技を見て「思っていたのと違った」と感じた人はいましたか?

なるせ 最初に、リハーサルでソフトボールの練習をしたんですよ。美麗ちゃんは不良役なので、バットの持ち方も荒々しくしてほしいなと思ったんですけど、そのソフトボールの練習をしたとき、オーソドックスな持ち方だったんです。不良だったらそうは持たないだろうなと思っていましたが、監督もそこまで演技の指示を出していませんでした。だから、心の中でこの構え方は面白くないなと思っていましたが、僕も監督ではないので口を出さずにいたら、本番では、構え方が変わっていたんです。不良っぽい構え方になっていたので、彼女が自分の中でキャラクターを作り上げたことに、けっこう驚きましたね。

――では、撮影現場で印象に残った出来事はありましたか?

なるせ KANON が、演技ができないことを悔しがって、泣いていましたね。一番プレッ
シャーがあったのかな。ピッチャーの胡桃人美役なので、投け方もけっこう練習していたんですよ。今回のキャスティングも、KANON がピッチャーなので、バッテリーとなるキャッチャーの薩間真麻役は、同じユニット Lucky Color’s の MIINA にしたんです。ピッチャーとキャッチャーみたいな関係が、はじめからあった方が面白いと思ったし、そういう方が役も作りやすいと思ったので。でも、自分の中で上手くいかないことがあったんでしょうね。監督は OK を出したのですが、自分は納得していなかったようで、一人で泣いていました。普通、監督から OK が出たらそれで大丈夫だと思うものなのですが、自分の中で意識が高く、何かが悔しかったんでしょうね。

――女優志望が集まっているだけあり、演技への意識が高い現場だったんですね。今回は、女の子が多い現場ですが、女の子同士で盛り上がっていたことなどはありましたか?

なるせ ムードメーカーがけっこういたので、みんな仲がよく、よくしゃべっていました。撮影は、廃校を丸ごと借りて行っていたので、教室が楽屋みたいになっていたのですが、お弁当は机をくっつけて食べるとか、本当にその教室のクラスメイトみたいな感じになっていましたね。映画の出演経験がある子たちは、わざと話をして現場を明るくして、独特な現場の空気に周りが飲まれないように、リードもしていました。

――では、アイドルファンの視点から、見てほしいシーンはありますか?

なるせ 台本にないところの芝居がけっこう面白いです。部室のシーンはみんながいるのですが、台本だとしゃべる人の台詞しか書いていません。でも、大勢がいる中で一人ずつしゃべるということはないですよね。撮影は長回し【編注:カメラを回し続け、カットしないで撮影すること】し、俯瞰で撮っているので、それぞれがキャラになり切った上でのアドリブの動きを見ることができますよ。台詞をしゃべっていないところの動きとかは、ファンには面白いんじゃないかな。

――面白かったアドリブはありますか?

なるせ 志賀きく子という、食いしん坊のキャラクターがいるのですが、いつもお菓子ばかりを食べているので、そのおやつを取り上げたりするといったキャラをいじる感じのアドリブは面白かったですね。

■グループを超えてメンバーが集まれるのがアイドル映画の魅力

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――これからのアイドル映画に期待することはありますか?

なるせ 僕はひとつのステップとして、アイドル映画が成功してくれたらいいなと思っています。作り手は、いわゆる“映画”を作りたいのですが、作った作品がヒットする確率は非常に少ないです。でも、アイドル映画はすごく安っぽく見られがちだけど、可能性が秘められていると思うんです。物作りの人たちは、面白い物を作ろうとしているので、そこにアイドルを乗せて上手く料理ができれば、すごく面白い物ができるのではないかと。また、アイドル映画はアイドルと作り手、どちらの橋渡しにもなると思うんです。

――それは、どういう意味ですか?

なるせ アイドルの中には、最終的には女優になりたいという子もたくさんいるじゃないですか。だから、彼女たちが女優になるためのファーストステップにはすごく良いと思います。また、物作りの人たちからすれば、映画を作ったけど、公開できないまま終わってしまうことも多いので、ひとつの突破口になります。アイドルは集客にも協力的だし。それに、タフだしね。ある意味、女優さんたちよりもタフかもしれない。そういう子と一緒にやることで、面白い作品も作れるし、イベントもからめたりできるので、楽しいですよね。

――アイドル映画の可能性というところでは、今後、どんな作品を作ってみたいですか?

なるせ アイドルのミュージカルなどは面白いんじゃないかな。やっぱり、歌って踊る派手な感じを、少なからずファンは求めていると思うので。歌って踊るインド映画みたいなのは、可能性があるんじゃないかな。

――最近は、ライブで演劇もするアイドルというのが出てきていますよね。

なるせ 増えていますね。なんなんでしょう、あれは(笑)。でも、僕は、普段巡り会わないメンバーが出会って、一緒のチームでやれるのが、演劇や映画の魅力だと思います。普段のアイドル活動の中で、ほかのグループとコラボして何かをするのは、ハードルが高いイメージがあるのですが、「映画をやります」というと、違うグループからメンバーが集まってきても、映画ならよしとする傾向があるようです。あるアイドルグループだけが主演する映画というのもありますが、制作面では事務所が協力的でやりやすいだろうけど、僕の中では、そういうのは映画としてあまり魅力がないんですよ。映画ならではのキャストが集まって作品を作るということに、意味があるのかと。

――そこにアイドル映画の面白さがあるのですね。

なるせ そうそう。普段見られない組み合わせが見られるうえ、演技で絡んでいるというのは、ファンからしてみれば面白いですよね。対バンライブで共演することはあっても、何かを一緒にすることはあまりないですから。そういうところにも注目して、アイドル映画を見てほしいです。
(取材・文/桜井飛鳥)

■『ソフテン!』今後の劇場公開情報
○12/6~12/19
萩ツインシネマ(山口)TEL:0838-26-6705
○12/13~
桜坂劇場(沖縄)TEL:098-860-9555
○12/27~1/23
宇都宮ヒカリ座(栃木)TEL:028-633-4445
○2015/1/17~1/30
青森コロナシネマワールド(青森)TEL: 017-783-5081
■ソフテン!公式ブログ http://ameblo.jp/softenmovie
■ソフテン!公式サイト http://softenmovie.info/
■ソフテン!公式ツイッター https://twitter.com/eiga_soften
■ソフテン!公式 Facebook https://www.facebook.com/softenmovie

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