『艦これ』『ガルパン』がより楽しめる!? 『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』

『艦隊これくしょん~艦これ~』(以下、『艦これ』)『ガールズアンドパンツァー』(以下、『ガルパン』)と新たな要素を得て、ミリタリーに対する関心を持つ層は、確実に広がっていると思う。

 そうした中で、近年、ジワジワと盛り上がっているのが軍歌に興味を持つ人々だ。長らく軍歌というのはあまりにマニアックすぎるジャンルであった。それが最近では、満州マニア、北朝鮮マニアなどともリンクしながら、確実に巨大化している。今までこんなジャンルでは女子の参加はほぼゼロだったはずなのに、イベントなどでもちらほらと見かけるようになったのも、その証左といえるだろう。

 そのきっかけとなったのが、辻田真佐憲氏が2011年に上梓した『世界軍歌全集―歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代』(社会評論社)だ。古今東西の軍歌300曲を収録したこの本を契機として、軍歌の愛好者が一挙に広がったことは間違いない。

 筆者も軍歌の愛好者として長らく“フランコ将軍が救国のために立ち上がったのに、住んでたところがバルセロナだったスペイン人”気分を味わってきた。この本は、そうした状況を脱却する聖典ともいえる一冊になったわけだ。

 そんな辻田氏が、前著より約3年を経て新たな著作を送り出した。それが『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』(幻冬舎新書)だ。

 今回の本で記されるのは、明治以降の日本の歴史を追いながら、いかにして軍歌が誕生し、大衆音楽の一ジャンルとして形成されていったかである。ここで記されるのは、明治以降の歴史の中で、軍歌は音楽会社や出版社、新聞社にとっても確実に儲かるビジネスであり、大衆に受けいられるものだった時代があるということだ。新聞社が懸賞金をつけて軍歌の歌詞を募集すれば、読者が山のように応募する。そして、量産される軍歌が大衆に娯楽として消費される時代があったことが本書から伺える。

 いわば軍歌は政治と結びついたエンターテイメントの一種であったのだ。辻田氏は海外取材の経験にも基づいて、現在でもその構図が継続している国もあることを記していく。

 辻田氏は本書の執筆動機について、「右傾化」をめぐる議論の中で政治とエンターテイメントの結合が語られる今だから読んでもらいたいと話す。

「『艦これ』や『ガルパン』がブームとなり、AKBがいずれ軍歌を歌うのではないかといった論が語られることもあります。けれども、そもそも軍歌とはどういうものだったのか、あまり知られていません。エンタメの政治化がどういうものかを知る上でも、本書は読んでもらいたいですね」(辻田氏)

 さらに、『艦これ』や『ガルパン』のファンも軍歌を知ればより盛り上がることができるとも語っていた。

 来年1月からの放送が予定されている『艦これ』のアニメ版。個人的には、そこでも軍歌が流れることを期待してやまない。とりあえずOPは『英国東洋艦隊潰滅』、EDは『比島決戦の歌』でどうだろうか?
(取材・文/昼間 たかし)

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