数々のSP音源を復刻する保利透氏が主宰するレーベル・ぐらもくらぶが、またまた諸手を挙げて賞讃したくなるCDをリリースした。
それが『六区風景 想ひ出の浅草』だ。いったいどんな曲を収録しているのかといえば、かつて浅草が大衆文化の中心だった時代に歌われた浅草オペラの歌を中心に漫談、軽演劇などが収録されているのである。
こう書くとなにか、懐古趣味のようにも感じられるだろうが、それは違う。
今では「下町の情緒」といった言葉で語られる浅草だが、明治・大正・昭和初期までの浅草は、そうではなかった。
その時代の浅草は、最先端の大衆文化が集積されるアヤシゲな空間だったのである。数多の映画館が並び、珍奇な見世物が次々と生み出され、雑多な人々が入り交じる非日常的な空間、かつ観光地……それが、浅草だったのである。川端康成の小説『浅草紅団』(講談社)などにも描かれているが、人々が浅草にやってくる理由は、健全な娯楽を求めたからではない。妙にエロい踊り子をはじめとするエログロナンセンスやら、なにやらを求めていたのである。
いわば、今の秋葉原に人々が集まるのと同じベクトルだったのである。
つまり、浅草オペラや松竹少女歌劇団はAKB48なんかの原型だと見て間違いないだろう。まあ、ライブで客を集めているわけだから、原型どころか大正と平成でちょっと雰囲気が変わっただけでほとんど一緒といっても間違いじゃなさそうだ。
今回のCDに収録された楽曲はほぼ時代毎に収められていて、時代の流れとともに大衆の嗜好がどう変わっていったかも、聞いて理解できる構成だ。
聞きどころは数々あるが、やはりじっくりと楽しめるのは多数収録された浅草オペラである。これまでのSP復刻物でいくつかの曲は聴くことはできたが、ここまで多くを聞けたのは初めて。文字でしか知らなかった「女軍出征」なんかは、初めて聞いて感動である。
おそらく、あと50年くらい後には、AKB48やら秋葉原の地下アイドルの楽曲を収めたCDなんかが発売になって「懐かしいなあ」と想うんだろうな、きっと。
(文/昼間 たかし)
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